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変幻自在 映画「ラブリーボーン」に主演のシアーシャ・ローナンさん

2010年1月29日

写真:シアーシャ・ローナン=小杉豊和撮影拡大シアーシャ・ローナン=小杉豊和撮影

 目の前にいる女性が試写で見たばかりの「ラブリーボーン」のヒロインだなんて……。両の瞳が透き通ったサファイアブルーであることを確認するまではおよそ信じられなかった。「身長が伸びたからでしょ」と本人は笑う。10代の少女はみるみる美しい女性へと成長するものだが、それだけが理由ではない。

 彼女が演じたスージーは幸せな家庭に育った14歳。あこがれの先輩に声を掛けられ、少々舞い上がっている。ところが、彼女は学校の帰り道、近所の変質者に殺害される。そして天国との境界にとどまり、残された家族の苦闘を見守ることになる。

 「最初は、殺された女の子の役なんて難しいんじゃないかと思いました。でも、演じているうちに、私たちと同じ普通の女の子だと分かったんです」

 スージーは、下界を眺めるうち、徐々に死というものを理解していく。そんな達観の心を、まだ10代半ばの少女がどうやって表現できたのだろう。

 「もちろん私は死について普段から深く考えてはいません。ただ、この映画は死そのものというより、人生の後に来ることを考えさせてくれる。生きている時と同じく、明るく素直に演じれば大丈夫だと思いました」

 映画のスージーよりずっと思慮深い印象を受ける。スージーは綿密な計算の下に創造された人物なのだと思い知らされる。

 彼女の変幻自在ぶりへの驚きは、2007年の「つぐない」を見ていれば、さらに大きくなる。この時は、嫉妬(しっと)心から取り返しのつかない過ちを犯す少女ブライオニーを演じ、米アカデミー助演女優賞候補になった。

 ブライオニーのツンとした高慢な態度、過ちを犯した後の、まばたきもせず一点を凝視する意思力。ふんわりしたスージーとは正反対。きっと彼女はどんな人物にでもなれるのだろう。

 「そうありたいですね。でも私は、撮影の期間中、ずっとその人物になりきって生活するタイプのメソッド俳優じゃない。監督の『アクション』という声で演技を始め、『カット』の声とともに自分に戻る俳優なんです。色んな人物になれると言っても、今の私が演じられるのはティーンの女の子だけだから」

 この言葉、謙虚さの発露と取るか、計り知れない自信と取るか。いずれにせよ、スター誕生の瞬間が訪れようとしている。(石飛徳樹)

    ◇

 Saoirse Ronan 1994年、ニューヨーク生まれのアイルランド育ち。9歳から演技を始める。他の出演作に「エンバー 失われた光の物語」(2008年、日本未公開。DVDあり)など。「ラブリーボーン」は全国公開中。

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