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世界の映画祭で称賛 コートニー・ハント監督の「フローズン・リバー」日本上陸

2010年1月30日

写真:コートニー・ハント監督拡大コートニー・ハント監督

■遅咲き監督、”境界”見つめて

 一昨年から世界の映画祭で称賛を浴びてきた小さな映画が、やっと日本に上陸する。1964年生まれの女性監督コートニー・ハントのデビュー作「フローズン・リバー」。生活に窮した2人の母親が、米国・カナダ国境の凍った川を渡り危険な犯罪に手を染める。遅咲きの監督が6年ごしの企画にこめた思いとは――。

 ニューヨーク州北部の貧困地区。白人女性レイは、夫に逃げられ、パート勤めで2人の子供を養う。先住民保留地に住むモホーク族のライラは、夫を亡くし、幼いわが子を義母に取り上げられた。

 古いトレーラーハウス住まいという点以外はほとんど共通点のない2人は、生活費を稼ぐためコンビを組む。凍結した川を車で渡り、カナダで不法移民を乗せて、米国に密入国させるのだ。

 「凍河を渡って密貿易が行われているという実話がヒント。あの地域は川が国境だけれど、モホーク族の居住地は両岸に広がると知り、『境界』とは何かを考えるようになった」と監督は語る。

 人種、文化、善悪、貧富……。女たちの周囲に、様々な「境界」が横たわる。2人の間にも壁がある。だが、それを崩す事件が、クリスマスに起きる。反目する2人を結びつけるのは「母性」だ。

 「境界の多くは人為的なもの。でも、子を思う気持ちは誰もが共感できる。心の境界を乗り越える力がある」

 自身も8歳の娘の母。コロンビア大学の卒業制作の短編で注目されたが、卒業後は家庭や育児を優先してきた。

 「当時は女性監督の仕事は少なかったし、プロでやっていく自信もなかった。『撮りたいんだろ』と夫が背中を押してくれたんです」

 04年に本作の原型の短編をニューヨーク映画祭に出品。観客の反応に励まされ、長編に撮り直そうと決めた。「映画業界人の反応は『国境? メキシコ人の話?』。南の国境は映画でおなじみだが、北にもあるとは思い及ばない。地味な話だし、スターも出ない。誰も相手にしてくれなかった」

 弁護士の夫が企画書を作って出資者を探し、50万ドルの製作費を集めた。監督いわく「プロが鼻で笑うような低予算映画」。だが、08年のサンダンス映画祭のグランプリを受賞。各地の映画祭を回り、昨年の米アカデミー賞ではレイ役のメリッサ・レオが主演女優賞、監督が脚本賞の候補になった。

 「こんな展開は予想もしなかった。私の考えなんて誰も興味ない、と思ってきたから。でも、『どうせ私なんか』と思ったら終わり。いくつだろうと、進みたいときに前に進めばいいのよ」

 30日から東京・渋谷のシネマライズ。各地で順次公開。(深津純子)

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