現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 映画・音楽・芸能
  4. 映画
  5. 記事

父の死、娘らの再出発を描く 映画「あの夏の子供たち」

2010年5月22日

写真:ミア・ハンセンラブ監督拡大ミア・ハンセンラブ監督

 最愛の父親を自殺で失った家族の葛藤(かっとう)と再出発を見つめたフランス映画「あの夏の子供たち」が29日から、東京・恵比寿ガーデンシネマで公開される。俳優、映画評論家を経て監督デビューしたミア・ハンセンラブの第2作。私淑していた映画製作者の実話をもとに、普遍的な輝きを持つ人間賛歌を描いた。

 映画製作の現場を切り盛りし、家では3人の娘のよきパパだった男が、経営難で命を絶つ。職場でも家庭でも、常に前向きな人だったのに。残された妻と娘は、彼が残したものを通して、知らなかった一面を発見していく。

 父親の選択は家族を深く傷つける。だが、幸福な記憶の数々が、悲嘆から立ち上がる力となる。「父親がそうだったように、妻も娘たちも生きる知恵に満ちている。それは私自身が常に求めてきたものでした」と監督。

 父親のモデルは、2005年に50歳で自死した独立系の映画製作者アンベール・バルザン。ユーセフ・シャヒーン、エリア・スレイマンといった作家性の強い監督の作品を後押しし、新人監督の発掘にも尽力した。監督自身も、駆け出し時代に彼から幾度も励ましを受けた。そんな彼が不況下で追いつめられていく様は、アート系映画の危機をまざまざと映し出す。

 「でも、映画界の話だから撮ろうと思ったのではありません。彼という人間を通して、創造の喜びや人のきずなの大切さを伝えたかった」

 遺族の毅然(きぜん)とした態度にも深い感銘を受けた。彼を追いつめた犯人捜しをする周囲と一線を引き、妻は夫の仕事を引き継ぎ、娘たちに父の大きさを伝えることに心を砕いた。「その成熟した姿がこの作品の原動力。どんな状況でも最善を尽くす生き方を私自身も受け継いでいきたい」(深津純子)

検索フォーム

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介
  • スター★ファイル