スポンサーの自治体が財政難のなか、公立音楽ホールにとって倹約と集客の双方が見込めるのが「共同制作」だ。
2月にびわ湖ホール(大津市)で、3月に神奈川県民ホールで上演したオペラ「ばらの騎士」は、舞台装置や衣装、カツラなどを共有し、制作費約1億4千万円の6割をびわ湖が、4割を神奈川が負担。国内のホールが初めて本格的にオペラを共同制作したことで注目された。
「経費を削れるし、公演数が増えるから舞台の完成度が上がる。ノウハウも交換できた」と関係者は口をそろえる。文化庁の新しい補助金制度にも後押しされ、来春に同じタッグで「トゥーランドット」を上演する。兵庫県立芸術文化センターと愛知県芸術劇場も共同制作を計画中だ。
舞台仕様の違いや予算の配分など、課題もある。それでも共同制作は、日本の公立ホールがオペラ制作を始めて10年余りがたち、経験が蓄積され、連携する余裕が生まれた証しだ。
文化庁によると、全国の地方自治体の文化芸術経費は93年度の8175億円をピークに減り、05年度は3229億円まで落ち込んだ。苦境の下で、様々な試みがある。
東京都墨田区立の、すみだトリフォニーホールは、当年度に稼げる見込みの入場料や協賛金など、事業収入の範囲で演奏会を企画する。ライブハウスのブルーノート東京と提携し、同じアーティストで曲目の違う公演を組んで入場券を相互販売する手法もユニークだ。西田透ゼネラル・プロデューサーは民間出身。「コスト感覚を徹底し、夢と情熱を注ぎ込めば、ホールは地元の誇りになれる」と話す。
石川県立音楽堂には、そこを本拠にするオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)がある。両者の運営は一本化されていて、互いに助け合う。例えばOEKが定期的に演奏会を開けばホールがにぎわい、稼働率が上がる。また、ホールが県外のプロ楽団を招いて自主公演を企画すれば1回500万円以上の費用がかかるが、OEKの演奏会なら、1回約50万円の利用料がOEKからホールに渡る。
楽団の維持にはコストがかかる。しかし、金沢の名を冠した楽団が県外へ演奏旅行に出れば、街のPRにもなる。「ホールに大切なのはソフト作り。それを生かして必死でサービスをしないと人は来ないし地域に溶け込めない。税金で造ったホールで我々はあぐらをかいてはいけない」と音楽堂の山田正幸常務理事。
兵庫県立芸術文化センターは、芸術監督の佐渡裕さんの指導で、リコーダーで合奏を楽しむ企画などを催し、地域で親近感をもたれることに成功。開館の翌年の06年に制作した「蝶々夫人」は予定の6公演が完売し、2公演を追加する盛況ぶりで、入場者数はすでに100万人を突破している。
北九州芸術劇場は、県外の人々がどの交通手段で訪れ、どの施設を利用したか、といった経済波及効果をアンケートなどで調べ、一般公開している。「街に新しい産業を作るのもホールの仕事。丁寧な情報公開は当然」と津村卓チーフプロデューサーは話す。
ホールを造った責任を負うべき行政はいま、財政の余裕を失っている。しわ寄せを嘆くだけでなく、未来をどう「自力」で描くか。ホールの力量が問われている。