指揮者のチョン・ミョンフンが今月、イタリアのスカラ・フィルハーモニー管弦楽団と共演する。「20年来の付き合いで親友のような存在」と語る楽団の魅力や、最近力を入れる若い音楽家たちの育成について話を聞いた。
いつもはミラノ・スカラ座のオーケストラピットにいる同楽団。今回用意した二つのプログラムには、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」やマーラーの交響曲第1番「巨人」などにまじり、ロッシーニやプッチーニ、ベルディといったお家芸のイタリア歌劇の序曲や間奏曲が並ぶ。
「表情豊かな彼らの歌心が表れる曲ばかり。団員全員が友人といってよく、私を深く理解してくれているからこそいい演奏ができるはず」と自信をみせる。
ソウルで生まれ、幼少期に米国へ移住した。チャイコフスキー国際コンクール2位というピアノの実力を持つが、オーケストラのレパートリーに魅せられて指揮者の道を選んだ。
30代半ばで舞い込んだのは、名門パリ国立オペラ・バスチーユの音楽監督の座。ほとんど無名の青年の抜擢(ばってき)に周りも驚いたが、本人が一番驚いた。なにしろ「フランス語も話せないし、フランスもののオペラを振ったこともなかったのですから」。
世界の第一線に躍り出てからの活躍は、広く知られているところ。日本とのかかわりも深まり、現在は東京フィルのスペシャル・アーティスティック・アドバイザーを務めている。
いま55歳。「いまだに新しい楽譜を開くたびに苦しい戦いが待っている」という日々の合間には、得意のイタリア料理で心をほぐす。その腕前は、料理本を出すほど本格的だ。
今後は、若い音楽家たちと過ごす時間を増やしていくつもり。特に、韓国・仁川市に設立した音楽アカデミーの話になると力が入る。
「アンサンブルと声楽を二本柱にして教え、アジア全体のクラシック音楽のレベル向上につなげたい。音楽の豊かさ、奥深さを若い人に伝えるのは私たちの使命だから」と笑顔を見せた。
東京公演は4、6の両日、サントリーホール。問い合わせはヴィヴァーチェ(03・5411・5651)。関西公演は5日、兵庫県立芸術文化センター。(谷辺晃子)