バー「汀(なぎさ)」を拠点とする渚ようこ。店内は昭和気分=東京・新宿ゴールデン街、遠藤真梨撮影
歌謡曲と新宿をこよなく愛する歌手、渚(なぎさ)ようこが10月4日、あこがれの新宿コマ劇場のステージに初めて立つ。年内いっぱいで閉館が決まった「歌謡曲の殿堂」での、駆け込み自主興行だ。題して「新宿ゲバゲバリサイタル」。夢に向かって積み重ねてきた地道な努力が花開く一夜となる。
歌手を目指して上京して以来、「いつかはコマ劇場」を目標に掲げてきた。
「私にとって聖地。新宿のスタジオで歌った帰り、わざわざコマに通じる道を選んで歩いたり、実際に客席で歌謡ショーを見たり。でも誰の公演だったか……。自分が歌う日に備えてのリサーチという気持ちが強くて、はっきり覚えてないんです」
歌手業のかたわら、03年にはコマ劇場からほど近い歌舞伎町・ゴールデン街でバー「汀(なぎさ)」を開いた。コマ劇場閉鎖のうわさもゴールデン街の口コミで知り、忘れかけていた「歌手としての初心」を思い出した。いても立ってもいられず、劇場に公演企画を持ち込んだ。予算を工面し、演出を練り、ゲスト出演を掛け合い、チラシを配り……。押し寄せる難題・雑用に立ち向かってきた。
ゲストには、クレイジーケンバンドの横山剣のほか、新宿にゆかりの深い若松孝二、山谷初男、三上寛、内藤陳らが名を連ねる。チラシの写真は森山大道が新宿の花園神社で撮影したものだ。
「新宿にいることで、会いたいと思った人と出会い、話をすることがとても自然にできる。歌舞伎町の雰囲気も、不思議と落ち着くんです」
新宿のにおい、そして昭和の気分がたっぷりしみこんだ歌声は、晩年の阿久悠の心も捕らえた。渚のアルバム「ノヴェラダモーレ」と7月発売のベスト盤「魅力のすべて」には、阿久の遺作「どうせ天国へ行ったって」が収められている。
レパートリーは、阿久作品からスタイリッシュな4ビート、仁侠(にんきょう)映画風なズンタカタッタの演歌まで多彩。古くて新しい歌謡曲への思いを3時間のステージで表現する。「コマ劇場のスケール感に負けないステージにしたい」
「新宿ゲバゲバリサイタル」の問い合わせは電話046・876・0712(岩神六平事務所)。(藤崎昭子)