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矢野顕子、4年ぶり新アルバム 「ケモノの私」に再会

2008年10月17日

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写真「人の期待なんてもう気にしない」と話した矢野顕子=郭允撮影

 しなやかで、自由奔放で、時に獰猛(どうもう)で。即興演奏を得意とするミュージシャンには多かれ少なかれ、そんなケモノ性がある。シンガー・ソングライター矢野顕子もその一人。22日発売の4年ぶりのオリジナルアルバム「akiko」(ヤマハ)で、矢野は自分の中にいるケモノに再会した。導いたのは、米国の人気プロデューサー、T・ボーン・バーネットだった。

 バーネットにプロデュースを依頼したのは06年の秋。B・B・キングやエルビス・コステロらを手がけ、何度もグラミー賞に輝いた売れっ子だ。「ダメもとでね」と矢野。が、すぐにバーネット側から「『ジャパニーズ・ガール』を聞いたときから、ファンでした」との返事が返ってきた。

 「ジャパニーズ・ガール」は76年に出た矢野のソロデビュー作。米人気バンドのリトル・フィートも参加し、話題を呼んだ作品だ。

 「私のことを覚えていてくれたこと自体、もう死んでもいいっていうくらいうれしかった」

 そのデビュー作から30年。過去26作の大半は自分自身でプロデュースしてきた。

 「長くレコードを作り続けてくると、自分でどんな曲を作り、どういうサウンドにするかだいたい予想がつく。だけど、もっと私には違うものがあるんじゃないか。人が期待する矢野顕子ではなく、まだなんか隠しているはず。彼はそれを引き出してくれる。そんな勘があったんです」

 まずは原点を見つめ直した。

 「彼があまりにいいって言うから改めて『ジャパニーズ・ガール』を大音量で聞いたら、格好いいのなんの。あっ、これが私だ。ケモノの私だってね」

 バーネットは懐が深かった。安心して、自由に演奏し、歌った。アルバムはゆるやかなピアノの旋律と静かな歌で始まり、全体にシンプルで穏やかな世界が広がる。

 「驚くほど警戒せず、背伸びもしない、まったく素の私のいいところが出たと思う」

 バーネットは、すてきな出会いも用意してくれた。ギタリストのマーク・リーボウ。哲学者然として、たくさんの引き出しを持つギタリストだ。この夏、日本で開いたデュオライブでは、息の合った即興の絡みを聞かせた。

 「彼には私と同じにおいがする。ライブは野犬が二頭、野原を転げ回っているみたいでしたね。何か言わなくても次が分かる」

 「akiko」というまるでデビュー作のようなアルバムタイトルは、糸井重里の発案。「いつかこういうタイトルの作品を、と3、4年くらい前に色紙で渡されていたんです。原点に、ケモノの道に戻った今回がぴったり」

 ところでケモノに戻る前は、何だったのだろう。

 にこっと笑ってこう言った。「うん、人間のふりしてた」(西正之)

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