国士舘大学の学園祭に出演した大月みやこ(中央)=東京都内
歌謡曲のステージをじかに見る機会は少ない。なんだか敷居が高い。女性歌手の豪華な和服、きっちり結い上げた髪にどうも気後れする。そんな聞き手に自分から歩み寄ろうと3日、大月みやこが国士舘大学の学園祭に登場した。特設ステージは音響も照明もごく簡素だが、そこはデビュー44周年の実力者。豊かな表現力で聴衆を魅了した。
間近で聞いて初めて気づいた。歌われているのは、ただ受け身で待って耐える女性ではない。函館、長崎、横浜と奔走する「女の港」でも、新曲「終着駅にて」でも、実は行動的。和服は、そんな曲を歌いこなす凜(りん)としたまなざしを引き立てる舞台装置なのだ。
翻って花火大会や成人式でにわかにあふれる和服姿を思う。どこかきまっていないように見受けられる場合もあるが、それは不慣れな着付けのせいではなく、着る人のまなざしが物足りないせいかもしれない。
地元と交流を深めたい大学側の意図もあり、聴衆の大半は近隣から訪れた中高年。彼らに遠慮して遠巻きに見ていた若者たちも最後にはステージに上がり、イベントを盛り上げた。「演歌を聴いてもらえるチャンスがどんどん減る中で、貴重な経験をさせてもらった」と大月。
年をとれば誰もが自然と歌謡曲に目覚めるなんて楽観できる時代ではない。団塊の世代はビートルズ世代。その下はニューミュージックやJポップで育った。勝手知ったる世界を飛び出し、新たな聴き手を開拓する試みは、歌謡界に限らず日本の音楽シーンを刺激してくれるはずだ。(藤崎昭子)