「奇想天外なことをやる気持ちがライブでも大事」と語る大野雄二=中嶌英雄氏撮影
アニメ「ルパン三世」やNHK「小さな旅」の音楽で知られる作曲家の大野雄二(67)が、原点のジャズピアニストに立ち返って刺激的なライブを展開中だ。トリオ編成での新アルバム「フォー・ラバーズ・オンリー」でも、エレガントで力強いタッチと、膨大な映像・CM音楽作品を通して培った娯楽性が溶け合った演奏で楽しませてくれる。
慶応大4年の63年、藤家虹二クインテットのピアニストとしてプロデビュー。米国から流れ込むモダンジャズやフリージャズに追いつけ追い越せとまねてみたが、来日ミュージシャンと共演するうちに日本のジャズシーンに行き詰まりも感じた。「マイルスバンドのメンバーでさえ、実はみんな昔のスタイルをきっちりおさえてる。そんな土台もなく、新しさだけ追ってもね」
そんなときCMの仕事が舞い込んだ。「スポンサーの意向や演奏時間など制約だらけ。そこが面白くて。何時間も考えると必ず解決法が出てくる」。様々な分野のレコードを大量に買い込んでは研究した。「単なるドミソの和音を否定するのがモダンジャズ。でも、素晴らしい人が演奏するドミソはハワイアンだろうとロックだろうと素晴らしいと気づいた」。やがて年間200本のCM曲を手がける人気作曲家になった。
故・石立鉄男主演のドラマシリーズをへて、77年から「ルパン三世」の音楽を手がけている。舞台は世界各地。コミカルな場面からシリアスな場面まで絶妙なBGMを生み出した。「ルパン」といい「スペースコブラ」主題歌といい、大人っぽいしゃれた音はまさに大野流だ。「ふつうアニメ音楽は子供向けにつくるけど、ぼくはちょっと背伸びさせたい。心がけたのは、編曲をはぎとっても成立する骨太なメロディー」
ジャズとは距離を置いたが十数年前、昔の仲間に誘われたライブでピアニストの血が呼び覚まされた。今は作曲を極力控え、ベースの俵山昌之やドラムスの江藤良人ら若い世代のメンバーと東京などのライブハウスに出演する。8月には北海道のロックフェスティバルに登場した。
「本当はこまかなニュアンスが伝わる会場でしか弾きたくないが、価値観の違う人が喜んでくれるのはうれしい。やり始めると、つい受けたくなってガンガンやっちゃう」
新譜「フォー・ラバーズ・オンリー」では「ムーンライト・セレナーデ」から「犬神家の一族」主題曲まで、ロマンチックな名曲を集めた。意表を突くイントロと構成にセンスが光る。「そこは僕らの命。フルートとトロンボーンを入れたユニットとか、同じピアノトリオでも、もっと凶暴なバージョンをやってみたい」と、アイデアは次々わいてくるという。
俵山、江藤に松島啓之(けいじ)(トランペット)、鈴木央紹(ひさつぐ)(サックス)、和泉聡志(ギター)を加えた「ルパンティック・ファイブ」と、15日にビルボードライブ大阪、20・21日にモーション・ブルー・ヨコハマ、24・25日に名古屋ブルーノートに出演する。(藤崎昭子)