イル・ディーヴォ=郭允撮影
テナー2人、バリトン1人のクラシック陣に、ポップス歌手が1人。出身もアメリカ、スイス、フランス、スペインとばらばら。個性が際だつ4種類のお酒で作られるカクテル、それが彼らの歌世界だ。このカクテル見るからに濃くて強い。その上、「4人の情熱も加わっているよ」(ポップスのセバスチャン)などと言われては……。
欧米ではその強さが好まれた。04年のデビュー以来、歌声やその容姿に酔いしれる人々が続出。過去3枚のアルバムの売り上げは2200万枚以上。06年のサッカーワールドカップドイツ大会では、開会式でテーマソングを歌う大役も果たした。
ポップスとオペラを融合し、「ポペラ」とも言われる。が、「オペラの世界を取り入れているけれど、僕らはあくまでポップスなんだ」とセバスチャン。
発案者は、米国の人気オーディション番組「アメリカン・アイドル」の審査員だったサイモン・コーウェル。パバロッティ、ドミンゴ、カレーラスの3大テノールに着想を得て、新しいポップスを目指したという。
質問ごとに、あうんの呼吸で回答者が変わる。でも、結成当初はぎくしゃくしたらしい。
「僕なんてまともな英語しゃべれなかったからさ。今もそうだけど」と人なつっこい笑顔のバリトンのカルロス。「今や、まるで魔法をかけられたかのように一体になったよ」
1年間の休養を経て、この11月に出した2年ぶりのアルバム「プロミス」(BMG)は、まろやかな味わいにあふれる。壮大なクライマックスを作ろうとする押しの一手は影を潜めた。
「仕事に追われる日々だったのが、充電してゆったりと作れたからね」(テナーのウルス)
よりポップス色を強めた選曲も目を引く。フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド「パワー・オブ・ラブ」、レナード・コーエン「ハレルヤ」……。
「クレージーでしょ。今までは曲に合わせていたけれど、新しいものを自分たちの世界に引き入れる。そんな試みだったんだ」(テナーのデイビッド)
09年には、テロや金融危機と不穏な空気が漂う世界を回る。
セバスチャンは言う。「音楽の素晴らしさは、貧富も肌の色の違いもなく、平和な瞬間を与えられること。私たちもその瞬間を世界に届けていきたい」(文・西正之、写真・郭允)
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〈IL DIVO〉 左からウルス・ブーラー(スイス)、カルロス・マリン(スペイン)、セバスチャン・イザンバール(フランス)、デイビッド・ミラー(アメリカ)。04年11月、アルバム「イル・ディーヴォ」でデビューし、全英チャートで初登場1位に。