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作曲家の内面「つなぐ」 異才のラツイック来日

2009年5月23日

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写真デヤン・ラツィック。楽譜はいつも、写真のように把握して暗譜するという

 クロアチア出身のピアニスト、デヤン・ラツィックが27日、東京・銀座の王子ホールでリサイタルを開く。「偉大な作曲家たちが自らの内面に勇気を持って対峙(たい・じ)した軌跡を追いたい」。スカルラッティ、バルトーク、シューベルトを組み合わせた独自のプログラムで真価を問う。

◆「建築家のように多彩な世界構築

 クラリネットも奏で、作曲にも秀でる異才だ。チェリストのピーター・ウィスペルウェイとの共演などでたびたび来日し、その才能の片鱗(へんりん)を示してきた。

 77年、ザグレブ生まれ。6歳でピアノを始め、9歳で映画「アマデウス」を見てモーツァルトへの恋に落ちる。

 バイオリンとピアノの名手だったモーツァルトにならい、父が吹いていたクラリネットを第2の楽器に選んだ。数年後には両方の楽器でコンクールに優勝、「神童」の名をほしいままにした。

 祖国の政情不安もあり、家族とともにオーストリアに移って、ザルツブルクのモーツァルテウム音楽院へ進む。

 二つの楽器の両立は難しいと、クラリネット奏者への道はあきらめたが「モーツァルトを解釈する上で、クラリネットをやっていたことは大きな強みになった」という。

 たとえば昨年、尾高忠明率いる札幌交響楽団と演奏したピアノ協奏曲第23番。晩年の澄み切った境地を示す傑作、クラリネット五重奏曲およびクラリネット協奏曲と同じイ長調で書かれ、しかも冒頭は3曲とも同じ2音のモチーフで始まる。

 「様々な音型と和音を思いもよらない手法で組み合わせ、多彩な世界を構築する。建築家に近いセンス。この神髄は、両方の楽器をやらなければ気づけなかったかも」

 協奏曲の独奏部分では、モーツァルトの他の作品を自在に引用、音の世界に存分に遊んでみせた。「『演奏家=作曲家』だった時代に近づく鍵は、即興にある。昔の音楽を今ここで生まれたかのように演奏できれば最高」

 2年前、「リエゾンス」という企画を始めた。フランス語で「つなぐ」という意味のタイトル通り、時代も様式もまったく異なる作曲家から互いに響き合うものを導き出してゆくのが狙いだ。

 一昨年には、バロック期の巨匠スカルラッティと、20世紀ハンガリーの作曲家バルトークを掛け合わせたCDをリリース。「この2人、同時代に生きてたら絶対いい友達になっていただろうな」。今回の公演でも、このコンビの「リエゾンス」を聴かせる。

 暇があれば映画館に足を運び、トーマス・マンを愛読。自分の思考を深める道を探し続けている。

 午後7時、5千円。電話03・3567・9990(王子ホール)。22日には東京・赤坂のサントリーホールで読売日本交響楽団とラフマニノフの協奏曲を共演。24日には千葉の木更津市民会館で別プログラムの公演もある。(吉田純子)

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