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R&Bの巨匠トゥーサン来日 「ハリケーンからの再出発」

2009年6月18日

写真拡大「ニューオーリンズは、ゆっくりと復興している」と語るアラン・トゥーサン=池田良撮影

 ジャズの街・米ニューオーリンズを代表する音楽家アラン・トゥーサンが、新作「ザ・ブライト・ミシシッピ」(ワーナー)を引っさげて来日し、東京、大阪でコンサートを開いた。05年のハリケーン「カトリーナ」で壊滅的な被害を受けた街から再び立ち上がった71歳の巨匠は、今何を思い、音楽と向きあうのか。

 10代で作曲を始め、ピアニスト、編曲家、プロデューサーとして、R&Bやソウル、ファンクといった音楽に新たな歴史を刻んできた。

 5月に東京・六本木であった公演では、新作の曲を織り交ぜながら、力強いピアノとまろやかな歌声でニューオーリンズの音楽の歴史をひもといてみせた。

 古里のニューオーリンズが米国史上最大の災害に見舞われたのは05年。カトリーナの襲来で街の8割が浸水し、1800人以上が死亡、120万人以上が避難したとされる。

 トゥーサンも自宅やスタジオが水没。家財道具に加え、貴重な資料や制作中の音源も失った。「家もスタジオも、もう十分に私に尽くしてくれた。これも新しいスタートだ、と考えた」

 被災直後からニューヨークの活動拠点と行き来しつつ、精力的な活動を開始した。復興基金を募るためのアルバム制作に参加し、06年にはエルビス・コステロとの共作も発表した。そして今回、トゥーサンが取り組んだのは、ニューオーリンズスタイルの古いジャズ。ミュージシャンでプロデューサーのジョン・ヘンリーの発案だ。

 「私はファンクやR&Bといった新しい音楽の世界で生きてきた。古い音楽でも、プレーヤーとして新たな可能性を模索できるのは、うれしいことだ」

 トランペットのニコラス・ペイトン、サックスのジョシュア・レッドマン、ギターのマーク・リボーら米国を代表する腕利きの演奏家を集め、デューク・エリントン、ジェリー・ロール・モートンらの曲を収録した。トゥーサンは独特なタメのあるタッチで、豊穣(ほうじょう)な音を紡ぎ出している。

 「ジャズであれファンクであれ、ニューオーリンズという庭に育った植物のようなもの。その土壌には、独特のリズムとユーモア、カリブ海を通じて流れ込んできた様々な音楽の要素が染みこんでいる」

 さらに、ニューオーリンズの音楽を一つに結びつけているものがあると言う。

 「魂だ。カトリーナは物質的なものを流してしまった。しかし、あの街と音楽にとって最も大事なものは、決して奪えなかった」(西正之)

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