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「女子、イイよね」に少し陶酔 「三文ゴシップ」椎名林檎

2009年7月10日

 「人は自分の魂をちぎって投げるんだ。それが言葉だ」と書いたのは、中島らもだった。椎名林檎の曲や歌唱は、その魂を丸ごとさらけ出すようなすごみを感じさせる。

 昨年でデビュー10周年。さいたまスーパーアリーナで3日間行った記念ライブでは、音楽性の幅広さや濃密さを改めて示し、もう一つの“ひとり紅白歌合戦”という趣だった。そして先月、ソロとしては6年ぶりのアルバム「三文ゴシップ」で次の一歩を踏み出した。

 「去年のライブで、あわよくば新曲も3曲はやりたいと思いましたが、オーケストラも含めた大編成という都合上、無理でした。全く新しい曲をライブでやるのがいちばん楽しい。慣れた曲の復習ばかりだと、やる側には悦がない」

 「私は自分の曲を甘やかしていて、いちばん『かわいい』と言ってもらえるタイミングで発表したい。だからそれまでは何年でも我慢してミスせず乗りきる。ソロでも東京事変でも、そこは自分に課しています」

 今だ!と好き勝手に作ったという新アルバムは、曲ごとに編曲者や演奏者を替えた。ラップをまじえたり、ミュージカルのように華やいだり、表情もさまざまだ。「密偵物語」「都合のいい身体」「凡才肌」など、タイトルはけれん味たっぷりだが、女性の本音や日常のもどかしさをつづった詞はこれまで以上にストレートだ。

 「私は絶対に女性でよかったと思っている。ちょっと今回は『女子、イイよね』というところに陶酔している嫌いがあって、男性にはいやがられるアルバムかもしれません」。確かに、今回収録された「カリソメ乙女」のように「女は誠の誓いなんて要らないよ」「女は嘘(うそ)を吐(つ)いたって好(い)いじゃないか」とたんかを切られたら、たじろぐ向きもあるだろう。

 「阿木燿子さんが好きなんです。阿木さんが書く女性ならではのこわさと、阿久悠さんの詞のように男性が書くファンタジーの中間のようなものをやりたい。作詞、作曲、歌い手がしっかり分業されていて、詞自体が演出になってるという形を、私も実現したいのかもしれない」

 歌い手に徹した彼女も見てみたい。早くも東京事変として取りかかっている新作では、どんな姿を見せるのだろうか。(文・藤崎昭子)

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