2009年10月26日
ロック評論家の大貫憲章さん(58)が都内のクラブで29年余りにわたって毎週開いてきたDJイベント「ロンドンナイト」がこの夏、終わった。クラブカルチャーの火付け役の一人として満30年を目指してきたが、8月いっぱいで毎週の開催にはいったん幕を下ろした。秋からは不定期のイベント「ロンドンナイト・エクストラ」と名を変えて、各地のクラブで内外のロックの紹介を続けている。
DJの第1回は80年1月。東京・西麻布の「トミーズ・ハウス」だった。その後、会場は転々としたが、一貫して英国のロックを中心としたDJを続けてきた。
当時はソウルやユーロビートのダンスミュージックが全盛だったが、大貫さんは「ロックで踊る」をテーマに、ハードロックやパンクも積極的にかけて個性的なDJと話題になった。ロンドンナイトには雑誌編集者やファッション関係者らが詰めかけるようになり、常連客からは多くの若手DJも育った。
以来29年余り。「まさかこんなトシまでやるとは思わなかった」という大貫さんが最近気になっているのは、ヒップホップ以降の音楽のありよう、特に独創性が軽視される傾向だ。
「ヒップホップの技法は基本がカット&ペースト、切り張りですから、何もない所から新しく作り出すよりも、すでにあるものをどう料理して聴かせるかに重点がある。オリジナリティーよりも編集の能力やセンスなんです。しかもリスナーがランキングを重視するようになって、最大公約数的で無難な曲ばかりになる。これが音楽全体の活力をそいでいるんじゃないか」
ランキングから漏れたものを正当に評価して紹介するのが今後の仕事だという。現在、地方FM7局でDJ番組「ロンナイ」を持っているが、番組で70年代の英国ロックを流すと特に反応が大きい。
「最近の音楽ファンは洋楽への関心が低い。歴史にも無関心でグラムロックも知らないファンが多い。たとえ知りたいと思ってもいいガイドがない。僕のDJイベントやFM番組はロックの寺子屋みたいなもの。そこをきっかけに入ってきた人をさらに案内する仕事を続けたい」(篠崎弘)