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「私」「人生」… 槇原敬之デビュー20年のベスト盤

2009年12月10日

写真「いろいろあったけど、楽しく申し分のない20年だった」と語る槇原敬之=福留庸友撮影

 シンガー・ソングライターの槇原敬之がデビュー20年となる来年、ベストアルバムを2枚出す。元日発売の「ベスト・ラブ」「ベスト・ライフ」だ。「どんなときも。」「世界に一つだけの花」など数々のヒット曲を送り出した希代のソングライターが軌跡を振り返った。

 ベストアルバムは、90年のデビューから今年11月の最新シングル「ムゲンノカナタへ」までの中から選曲。「ベスト・ラブ」は初期の代名詞だったラブソングを、「ベスト・ライフ」は人生や日常を見つめた歌が中心で、それぞれ15曲を収めた。

 大学浪人中にデビューした槇原。将来への不安が消えないなかで生まれたのが、「どんなときも。」だった。映画のテーマ曲の依頼を受けた喫茶店を出て、すぐに「どんなときも」という言葉がメロディーと共に浮かび、道ばたでメモをとった。「これはダサイなあ、と思ったけど、ずっと頭の中に鳴っていた。好きなことをやりたい、という切なる思いだったんだろう」

 このヒットで一躍、人気歌手になり、「もう恋なんてしない」「冬がはじまるよ」など自信なさげな男性の恋愛を描いた曲を生み出していく。「ぼくも恋愛でうまくいったためしがなかった。でも自暴自棄でなく、希望も入れていた。つらいことにも何か意味があるはずだと先天的に思っていた」

 だが、多忙で自分を見失う。99年に覚せい剤所持容疑で逮捕され、有罪に。それが自分を見つめ直す機会になった。「すべてがなくなり、見晴らしが良くなった。信じていたものがいいかげんだったことに気づき、何が本当に正しいかを知りたくなった」

 仏教に出合い、作品のテーマを私小説風の世界から「人生」へと広げた。その成果が、SMAPに提供した「世界に一つだけの花」だ。依頼を受けて最初に出した曲をボツにされ、締め切りが迫るなかで書きあげたという。

 「部屋の床に犬と寝ていてパッと起きたら、ものすごくきれいな雨が降っている朝だった。頭に浮かんでくる景色を文章化していくだけで、自分が書いた感覚はなかった」と言う。「ナンバーワンでなくオンリーワン」という主題は、仏教の教え「天上天下唯我独尊」が念頭にあった。

 03年に発売されたSMAPのシングルは約250万枚を売り上げた。「ぼくが歌ったら、こんなにはやらなかった」と笑いながら、「人を見て幸せをはかるのではなく、自分の内面から真の幸せを見つける時代になってほしい」と話す。

 ベスト盤ではこれらの代表曲は、アレンジを大胆に変えて再録音した。来春ごろには新しいアルバムを発表したいという。(宮本茂頼)

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