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鍵盤で歴史を駆け巡る ピアニスト白石光隆

2009年12月19日

写真拡大「引き受けた以上は、どんな企画も心から楽しみたい」と語る白石光隆=吉田写す

 今年最も多彩な活動を繰り広げたピアニストは、彼かもしれない。白石光隆のことだ。生誕100年を迎えたルロイ・アンダーソンのアルバムを出し、南米の巨匠ビラロボスの作品に取り組み、リサイタルではショパンやベートーベンの円熟期のピアノソナタに向き合った。「好奇心のまま走ってきたら、いつしか勉強が趣味になっていた」と語った。

 「タイプライター」「ラッパ吹きの休日」「シンコペイテッド・クロック」……。米国の国民的作曲家アンダーソンが、自作の管弦楽曲を自らピアノ用に編曲した全25曲を、アルバムに収めた。

 「ずっと関心はあった。軽い音楽と思わず、ベートーベンなどと同じような姿勢で向き合った」。よく知られた名曲の新たな魅力を、粒立ちのいい軽やかなタッチでさりげなく掘り起こした。

 どんな音楽にも柔軟に向き合う白石に、多くの音楽家たちが信頼を寄せる。ムラビンスキーやトスカニーニら大指揮者が作曲した作品を特集する一風変わった企画にも、腰軽く参加した。

 「好奇心のままにアンテナを張りめぐらせる。その姿勢から、色々な自分が見えてくる。どんな方向からでも学ぶ気があれば学べる、と常に気づかされる」

 年間100日は何らかの公演に出演。器用な印象があるが、実は「楽譜を読むのが苦手」。1時間練習する前に2時間楽譜だけに向き合う。想像力をふくらませ、ここが山で、ここが谷――と物語を紡いでから鍵盤に指を置く。

 89年に東京芸大大学院を修了、米国のジュリアード音楽院に留学した。「バブル崩壊の時期だったけれど、どんな芸術に触れても、今ここで何か生まれてくるぞ、というわくわく感が感じられた」

 ピアニストが世界にごまんといる中で、自分はどうあればいいのか。帰国後ずっと模索してきた。「これでいいかも」と思えるようになったのはつい最近のことだ。

 音楽が「仕事」になってしまわぬよう、年に1回の自主企画リサイタルを自らに課す。そのため、系統立ててものを見たり聴いたりすることを心がけている。

 「ドビュッシーの全作品を、書かれた順番に聴いたりしている。彼が生きた時間の流れを肌で感じることが、実際に演奏する時、音を粗末にせず慈しむ姿勢をくれるような気がする」(吉田純子)

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