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「天使の歌声」にも時代の波 厳しさ不人気、志望者激減

2010年2月12日

写真歌声を披露するウィーン少年合唱団の団員たち=同合唱団提供

 「天使の歌声」として日本でも人気のウィーン少年合唱団が転機を迎えている。声変わりすれば退団という伝統や厳格な寮生活が豊かな時代に育った子どもや親たちに受け入れられなくなり、入団希望者が激減している。合唱団は退団後の音楽大学進学を支援する付属学校の新設といった対応に乗り出した。

 ウィーンの北部にたたずむ白亜の館に、毎朝、ボーイソプラノの澄んだ歌声がこだまする。栄華を誇ったハプスブルク家の人びとが狩りを楽しんだアウガルテン宮殿。ウィーン少年合唱団の本拠地だ。

 緑に囲まれた広大な敷地に、合唱団付属の幼稚園と小学校、日本の中学校にあたるギムナジウムの下級校(5〜8年)がある。ここで才能豊かな子どもたちが寮生活を送りながら独自の音楽教育を受ける。栄えある団員になれるのは、下級校に所属する10〜14歳の約100人だけだ。

 合唱団の運営は海外公演の収益や寄付で賄われる。団員にはギャラが支払われない代わり、負担する授業料と寮費は月々90ユーロ程度(約1万1千円)で済む。「経済的に裕福な家庭でなくても入団できる」(広報担当)のが売りの一つだった。

 「人数的には足りているが、志望者は確実に減っている。昔に比べて質を維持するのが一苦労」。かつて自分も団員だったゲルハルト・ウィルト芸術監督(44)は嘆く。

 入団希望者がピークだった1950〜60年代には約30人の募集枠に500人以上が殺到した。しかし、希望者は減り続け、競争率は最近では2〜3倍に落ちている。

 ただ、どんなに優秀でも14歳でギムナジウムを卒業するか、変声期を迎えると親元に戻され、一般の普通校に転校する。将来、音楽関係の仕事に就くのは2割程度という。

 合唱団は、親たちの強い要望に応え、9月からギムナジウムの上級校(9〜12年)の新設を決めた。定員は各学年25人。退団者を優先的に入学させ、残りは外部から選抜する。女子にも門戸を開く。

 一般課程のカリキュラムに加え、毎日2時間の声楽レッスン、音感を磨く耳のトレーニング、地元ウィーン音楽大学と連携した楽器演奏の授業などを設ける。学費は月340ユーロ(約4万1800円)。卒業試験に合格すれば、音大に入る際の実技試験が免除されるなど「特典」もある。

 6月に下級校を卒業するフロリアン君(13)は「将来は科学者か音楽家になりたいけど、今すぐ決められない。上級校ができれば合唱団の友達も大勢いるし、レッスンを受けながら進路をゆっくり考えられる」と喜ぶ。(ウィーン=玉川透)

     ◇

 〈ウィーン少年合唱団〉 1498年、ハプスブルク家出身の神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世が、ウィーンの宮廷で組織した変声期前の少年6人による少年聖歌隊が始まり。ハプスブルク家のオーストリア・ハンガリー帝国崩壊後の1924年、民間の少年合唱団に再編された。

 現在、10〜14歳の約100人が「シューベルト」「ハイドン」などかつて団員だった有名作曲家らの名を冠した四つのグループを編成。交代で2、3グループが約3カ月間におよぶ海外公演に出かけ、留守組が毎週日曜日、ウィーンの王宮礼拝堂のミサで聖歌隊として歌う伝統を守る。

 団員の9割がオーストリア出身だが、米国やカナダ、ドイツ、中国など各国から入団し、日本人も5人いる。

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