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もどかしさ迫る声 シンガー・穂高亜希子

2010年5月17日

写真:石動弘喜氏撮影石動弘喜氏撮影

 ライブハウスの小さな空間でこの声と出会ったとき、正直たじろいだ。ほとんどファルセットで歌う声は、暗闇で光る抜き身の刃物のよう。ノリだけの日本語、ごまかしの英語詞がない。逃げ場のない切迫感。生きにくさ、伝わらない言葉のもどかしさが、耳に迫ってくる。

 「ピアノを習い、ロックバンドでベースを弾いていた。でも自分のことを突き詰めて表現していない。悩んでいました。今の世の中の軽さ――暗いことや真剣になることが恥ずかしいっていう、ノリだけの軽さがいやだった。何より、空気にあわせて言葉をごまかし、うまく生きている自分が、一番、嫌いで」

 バンドを辞め上京したが「もっと孤立して人前に出るのが怖くなり、自律神経もおかしくなってしまって……」。続けていたライブも全部やめた。捨てきれなかった歌のいくつかが、偶然、アルケミーレコード主宰で音楽家のJOJO広重の耳にとまり、CDデビューした。

 「昔は、世の中へアンチの気持ちが強すぎたけれど、人と話せないとき優しくしてくれたのが、音楽なんて何も知らない普通のおばさんだったり。今はかたくなさを捨て、伝わらないかもしれないけれど伝えたい、という思いで歌っています」

 穂高を始めフジロックにも出演した見汐麻衣、ひらちん、SHIHO、藤田ゆかと女性シンガーばかりを集めたアルバム「日曜日のうた」(アルケミー、発売はアップリンク)が出た。(近藤康太郎)

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