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音楽への魂 娘が継ぐ 米の作曲家バーンスタイン 没後20年

2010年5月26日

写真:「父親みたいに上手に演奏できないが、私は音楽を愛している」と語るジェイミーさん=東京都千代田区拡大「父親みたいに上手に演奏できないが、私は音楽を愛している」と語るジェイミーさん=東京都千代田区

 ミュージカル「ウエストサイド・ストーリー」などで知られる米国の作曲家・指揮者レナード・バーンスタイン(1918〜90)は、音楽教育に情熱を注いだ。没後20年を機に娘のジェイミー・バーンスタインさん(57)が来日した。音楽に親しむ糸口を――父の魂を引き継ぐことの喜びを語った。

 バーンスタインが娘のために企画したと言われる音楽教養番組がある。米CBSテレビの「ヤング・ピープルズ・コンサート」だ。この番組にまつわる思い出をたぐる。

 彼がニューヨーク・フィルの音楽監督に就任した1958年に始まった。まだ幼かったジェイミーさんを意識し、子ども向けに音楽理論の基礎をやさしく講義した。

 「プライムタイムに、米国各地の家族がだんらんしながら見ていたというから驚きです」

 米国ではその当時、学校の授業で音楽を教わったことがなく、オーケストラの生の演奏を聴いたことがない人も多かったという。

 父と娘の会話が講義の話題になることも。ジェイミーさんはビートルズの大ファンで、よく一緒にラジオやレコードを聴き、語らった。

 「おおっ、これはミクソリディア旋法だ。知っているかい」と、うれしそうに話しかけてくることもあった。「知らない」と答えると、次の番組収録では、ビートルズの曲をピアノで弾き、その教会旋法について講義した。

 ジェイミーさんはコンサートプロデューサーとして、父の楽曲を使った公演を米国内外で開いている。「あの番組を見て、音楽の道を志した」と先々でオーケストラの団員に話しかけられ、影響力の大きさを感じた。

 今、コンサートで子どもたちに、リズムに合わせて手足を動かしてもいいんだよ、と伝える。1曲でも楽しいと感じたら、そこが音楽に親しむ糸口になる。「父自身がメロディーやリズムに子どもみたいな好奇心を持っていた。シリアスなクラシックでは表現しきれず、ミュージカルの中で思う存分、発散していた」

 彼の死後も、音楽教育の情熱は弟子やファンの手で受け継がれた。

 たとえば、ベネズエラの若手指揮者グスターボ・ドゥダメルを父の姿に重ねる。「未来のクラシック音楽の可能性はここにある」と感じた。

 ドゥダメルは若者を貧困や犯罪から守るため、無償で楽器を教えてオーケストラを組織する教育プログラム「エル・システマ」の出身だ。その中で、ウエストサイド・ストーリーの「マンボ」を指揮したことがある。楽器を手にした若者たちが声をあげ、踊りながら喜びを爆発させる動画はユーチューブで世界に配信された。「これこそ父の理想。生きていたら一緒に跳びはねたでしょう」。その光景を思い浮かべるように話した。(寺下真理加)

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