2009年11月11日
10日に亡くなった俳優、森繁久弥さんと50年以上の付き合いがある黒柳徹子さん(76)が11日、東京都内のホテルで記者会見し、「悲しかった。がっかりした」と無念そうに語った。
「ちょっと年上の近所のおじちゃんという感じで(私は)猫かわいがりだった。しかられたこともなく、会えば面白い話をしてくれた」
テレビ草創期に「テレビ女優」としてデビューした黒柳さんにとって森繁さんは大先輩にあたるが、「テレビのスタートラインは同じ。当時、生放送を命がけで一緒に切り抜けてきた同志の気持ち」という。
「ドラマもバラエティーもあれほどセリフの上手な人はいない。森繁さんのように、人が書いたものを読むのではなく自分が言っているようにセリフが言えたらいいとずっと思っていた。今、私のしゃべるセリフが自然に言っているように聞こえるとしたら、それは森繁さんのおかげ」と語る。
黒柳さんが司会を務め76年に始まった「徹子の部屋」の第1回のゲストは森繁さんだった。これまでの出演は14回にのぼるが、「森繁さんの話のテンポと内容が番組の基礎になってこれまで続いてきた。ウイットのある話を随分していただいた」と話す。
最後に会ったのは06年ごろ。森繁さんの話をテレビ演出家の故・久世光彦さんが単行本「さらば大遺言書」にまとめるのを手伝ったときという。
「森繁さんが話の途中で『(好物の)ステーキやフォアグラが食べたい』と言い出した。それを私は調教師のように『あと30分話したらステーキ食べさせてあげます』などと続けさせた」
黒柳さんは森繁さんの死を「大往生」と思えない。「森繁さんは、たくさんの女優をそばに置いて派手に何かをやるか、男らしく心に秘めた腹芸のできる役を最後に一つやるか、もうひと花、ふた花咲かせてから逝きたいと思っていたのではないかと思う」(松田史朗)