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江戸川乱歩「人間豹」を歌舞伎化 謎めいた「ホラー芝居」に

2008年10月31日

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 猛獣をかたどった影が女性の命を脅かす。江戸川乱歩の「人間豹」。松本幸四郎、市川染五郎の親子が来月、東京・三宅坂の国立劇場で、乱歩作品の歌舞伎化を初めて試みる。昭和モダニズムに満ちた世界を江戸末期に移した「江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)―明智小五郎と人間豹―」(岩豪友樹子脚色、九代琴松演出)だ。染五郎は「怪談ではなく、ホラー芝居にしたい」と語る。

 着想は94年にさかのぼる。「新しい歌舞伎を構想するうち、明治期以降のとらえどころのない感覚にひかれていった。インテリでモダンな演劇など、いろんなものが日本に入ってきた時代。その象徴のひとつが『乱歩だ』と思った」

 「人間豹」は34〜35年に「講談倶楽部」に連載された長編ミステリー。乱歩自身、気に入っていたという。人間豹(染五郎)は青く光る目、獣の爪、猫族のざらついた舌を持つ半人半獣の殺人鬼。物語は明智小五郎(幸四郎)とのバトルを軸に展開する。

 「豹人間という謎の生物が出たり、気球で逃げたり、見せ場があって、歌舞伎にしやすそうだった。完全な二枚目や全くのヒーローは興味ないのです。ひねくれ者、矛盾を抱えている役がいい」

 今回、「極力、歌舞伎の引き出しを開けない」という。親子で取り組む、演劇としての歌舞伎を追求する歌舞伎企画集団「梨苑座」の試みにも近いのだろう。「完全な新作ですが、歌舞伎なので、どこから撮影されても絵にならないといけない」。音楽は生音と録音を両用、照明も立体感をもらたす使用法を採る。

 「容姿や行動の不気味さもたっぷり入れて、『?』を増幅させるような恐怖感を考えたいですね。無機質な国立劇場はぴったりです」

 乱歩作品は過去「黒蜥蜴」「陰獣」などが舞台化されているが、原作は心理主義を排除する傾向が強い。「何で豹人間になったのか、何で殺しをするのか。経緯や理由は、原作には書かれていない。行動には理屈がないけれど、それで成り立つのです。今回は、時代が生み出した怪物という解釈ですが、あまりにも理詰めだと、歌舞伎をそこねてしまう」

 染五郎が模索する新たな歌舞伎の理想型は、どんなものか。「歌舞伎は二次元的な書き割り芝居。その最たるものが松羽目物でしょう。色彩も音楽も言葉も、二次元的な感覚になる究極の構成舞台としての松羽目物。それが正しい歌舞伎の進化と思う」

 11月3〜26日。13日休演。ほかに市川高麗蔵、市川春猿ら出演。新内仲三郎による新内節の出語りも。1万2千〜1500円。(米原範彦)

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