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生まれ変わる歌舞伎座、感謝の舞

2009年9月5日

 上質な芸を見せる日本舞踊家の梅津貴昶(たかあき)が27日、東京・歌舞伎座で梅津流創立25周年を記念する「第13回梅津貴昶の会」を開く。来年5月から建て替えに入るため、現在の歌舞伎座での会は最後となる。中村勘三郎が特別出演し、盛り上げる。貴昶は「新しい歌舞伎座での上演に向けた第一歩にしたい」と話す。

 能のようでいて、また、歌舞伎舞踊のようでいて、さにあらず。身体のさばきは清麗で、濁を含むことがない。貴昶の芸は、派手な衣装や化粧を原則として排した「素踊り」で、能と歌舞伎の狭隘(きょうあい)な境目に成立している。「舞踊」とはニュアンスが異なる「舞い踊り」と自ら言う。

 貴昶を名乗る披露公演だった85年の第1回の会以来、歌舞伎舞踊の大作、地歌や古曲などによる舞や踊りを幅広く手がけてきた。貴昶が心酔していた日本舞踊家、武原はんを招いたこともある。一舞踊家が定期的に歌舞伎座で会を開くのは珍しい。

 「歌舞伎座は枠取りに品がある。足袋の下の舞台板、一枚一枚に感謝して踊りたい」

 今回の演目には恩人たちへの感謝も込める。「京(きょう)鹿子(がのこ)娘道成寺」は、竹本と長唄で道行(みちゆき)から鐘入りまでを踊る。鞠唄(まりうた)による手踊り、手ぬぐいを使うクドキ、鞨鼓(かっこ)や鈴太鼓の踊り……。場面はめまぐるしく展開する。「能から来た作品だが、あくまで芸を尽くした娘の踊りとして演じる。鐘への執着を強く見せる所作はしないつもり」

 幼少時に初めて歌舞伎座で見たのが、51年に上演された故六代目中村歌右衛門の「娘道成寺」だった。85年の第1回の会でも踊った。「娘道成寺で始まり娘道成寺でしめくくる感じ。成駒屋(歌右衛門)という『惑星』に出会ったのも大きなことだった」

 「素踊りは黒」という二十数年前の歌右衛門の忠告通り、今回は黒紋付きで臨む。「年月を経て黒の意味がようやく分かってきた。成駒屋への感謝も込めたい」

 「三社祭」は97年の会でも勘三郎(当時勘九郎)と踊った。心の中の善悪が入り乱れる様を描き出したといわれる。善玉(貴昶)と悪玉(勘三郎)が、躍動感豊かに競演する場面が見せどころだ。

 六代目藤間勘十郎からのアドバイスを胸に「善悪がけんかではなく、お手玉のように楽しそうに踊るように心がける」。

 「若いころ、六代目尾上菊五郎夫人に大変お世話になった」。勘三郎も、演奏の清元延寿太夫も六代目の血縁であるため、「六代目賛歌の気持ちも注ぎたい」。

 「まだ踊りたい古典もあるし、今後、いい音、いい新作との出合いも楽しみ。14回目も、生まれ変わった歌舞伎座で開催したい」

 午後6時開演。演奏は竹本谷太夫、杵屋巳太郎、田中傳左衛門ら。4千円〜2万3千円。電話03・5565・6000(松竹)。(米原範彦)

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