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「五耀会」の旗揚げ公演 若手が「日舞の今」物語る

2009年9月19日

 40代の日本舞踊家5人がそれぞれ輝きながら、日舞界を輝かせたい――。そんな思いで始まった「五耀会(ごようかい)」の東京での旗揚げ公演は、正攻法に日舞の現状を物語る内容だった。一般客へのインパクトは薄かったが、新作の発表など今後の展開を期待したい(14日、東京・国立劇場)。

 西川箕乃助(みのすけ)、花柳寿楽(じゅらく)、花柳基(もとい)、藤間蘭黄(らんこう)、山村若(わか)。60代ごろから芸が熟成してくる斯界(しかい)にあって、彼らは若手・中堅に属する。だが、後年の芸を推知させる“芽”は各人に既に表れていると見た。

 最初は若の上方舞「葵(あおい)の上」。このところ若は所作が能弁に。この曲でも、女の怨念(おんねん)は、いわば思い出の小箱におさまる懐かしさに変じて、はかなげだ。扮装で臨むせりふ入りの歌舞伎舞踊「浜松風」は蘭黄と箕乃助で、若い娘と横恋慕する男が登場する。蘭黄は涼やかでりりしく、箕乃助は小気味よい。

 創作舞踊「一人(いちにん)の乱」。寿楽と基が武士の誇りや友情をせりふ入りの素踊りで描写。寿楽は誠実な所作で、故郷に殉じる情をにじませた。基が馬を御する表現は躍動的で、あたかも人馬一体、基は駿馬(しゅんめ)の体だ。5人総出の新作「七福神船出勝鬨(ひちふくじんふなでのかちどき)」でにぎやかに締めくくった。

 「日舞の今」を見せる舞台としては成功。各人の古典的な技の深化も見守りたい。だが、主眼の一つでもあったはずの、一般客にも魅力的な「パフォーマンスとしての日舞」は感じ取れなかった。

 日本舞踊家の本分は所作万能主義だろう。この意識による新作、新演出、身体能力を生かした驚くべき所作を見てみたい。亡き日本舞踊家川口秀子はマイケル・ジャクソンのダンスを称賛していた。まねは戒めながら、所作の様式的変換を果敢に試みてもよい時代が来ているのではないだろうか。(米原範彦)

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