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観世会定期能 初会 多士済々の趣

2010年1月11日

 能楽のシテ方観世流で「初会(はっかい)」と呼び習わされる1月の観世会定期能。舞台に、しめ縄飾りをしつらえ、正月気分を演出。能にして能にあらずと言われる「翁(おきな)」が始まった。筋はなく、天下泰平、五穀豊穣(ごこくほうじょう)などを祈る祝言曲だ(3日、東京・渋谷の観世能楽堂)。

 同流の武田文志による千歳(せんざい)が、気合を込めて舞台を清めると、宗家の観世清和による翁が現れる。横に開いた両腕、右手の扇、肉色(にくしき)の翁面などの角度の妙で、宙を舞うかと見える。久遠の時の流れを閉じこめた寛(ひろ)やかな旋律に遊ぶかのようだった。

 最後は、和泉流狂言方の石田幸雄による三番叟(さんばそう)。「揉(もみ)ノ段」と、黒い面をつけての「鈴ノ段」で構成。リズミカルで派手な動きが目立つ。鼓との掛け合いは剣を交えるようで緊迫感がいや増してゆく。だが、「揉ノ段」で、両足を交差させて進む「反閇(へんばい)」のあたりになると、石田から宗教的儀式の気配が薄らいでしまった。

 現代の能楽師が日本古来の宗教性を表現するには、人によっては現代の風を締め出すくらいの禁欲的で求道的生活が必要なのかもしれない。

 一方、能「高砂」では、四拍子による音楽的酩酊(めいてい)が能を支配する様子に直面した。

 相生の松を題材にした能で、前場は淡々とした調子。だが、後場、笛の一噌幸弘が吹き耽(ふけ)るのを、小鼓の曽和正博が粘着性の強烈な音で御すると、「統一された乱気流」とでもいうべき音世界が生み出された。シテの関根知孝もその気流に身を任せ、躍動的に舞った。

 仕舞の数々も披露され、観世流の現状を示した。

 枯淡の片山幽雪、剛毅(ごうき)な観世銕之丞、胡蝶(こちょう)のような観世喜之、洗練の梅若万三郎、りりしい観世三郎太ら多士済々の趣だった。(米原範彦)

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