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農の原点、能楽に学ぶ 食の問題も提起

2010年3月27日

写真拡大多田富雄さん

 能楽上演や講演会を通じて現代が直面する問題を考える「自然科学とリベラルアーツを統合する会」が4月11日、東京・本郷の東大安田講堂で「日本の農と食を考える――農・能・脳から見た」と題する催しを開く。古典芸能と諸科学を結びつける、斬新な発想による企画だ。

 催しは、同会代表で世界的な免疫学者でもある多田富雄さんの危機感から生まれた。多田さんは能楽やダンスに鋭い鑑賞眼も持つ。9年前に脳梗塞(こうそく)で倒れ、今は言葉が不自由だが、キーボードを使った電子音声などで意思を伝達。細分化してやせ細った諸科学を再統合することが急務と、2007年に同会を立ち上げた。

 実行委員には建築家の磯崎新さん、作家の加賀乙彦さん、科学史家の村上陽一郎さん、宗教学者の山折哲雄さん、解剖学者の養老孟司さんら30余人が名を連ねる。これまで「感染症」「地球温暖化」をテーマに催しを開いてきた。

 今回は、世界の飽食と飢餓の不均衡を踏まえ、飽食の日本の農業政策を問い直す。多田さんは「『食の危機、命の危機、文化の危機』は深刻。猶予はない」という。

 目玉である古典芸能の舞台は、実行委員でもある狂言師の野村万作さんらによる「三番叟(さんばそう)」。能楽の根源的な曲で、五穀豊穣(ごこくほうじょう)をことほぎ、躍動感あふれる祈りの芸能だ。

 元来、日本の古典芸能は神事と密接で、神事はまた農事と不可分だった。「農耕民族が共有する生への賛歌を通じて、農の原点や本質を感動とともに実感してほしい」と多田さん。

 講演では、生源寺真一・東大農学部長が日本の農業政策の問題点を指摘する。その上で、辻彰・金沢大名誉教授や種苗会社の研究者らが、問題点を乗り越えるための伝統農法や最新農法について報告する。歌手の加藤登紀子さんが「農的幸福論」と題して話し、全員討論に入る。

 多田さんは「食と農の課題を、より広く、遠く、深く見直し、問題点を明らかにし、解決に向けて糸口を提起してみたい」と話している。

 午後1時開演。3千円。電話090・9676・3798(アトリエ花習)。(米原範彦)

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