現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. エンタメ
  3. 舞台
  4. 古典芸能
  5. 記事
2012年2月4日11時21分

印刷印刷用画面を開く

mixiチェック

このエントリーをはてなブックマークに追加

文楽 未来への決意 2月公演、多彩な演目の裏に危機感

写真:赤と緑、計4体の大蛇が舞う「日本振袖始」 拡大赤と緑、計4体の大蛇が舞う「日本振袖始」

写真:竹本住大夫=伊藤菜々子撮影 拡大竹本住大夫=伊藤菜々子撮影

写真:鶴沢清治=伊藤菜々子撮影 拡大鶴沢清治=伊藤菜々子撮影

写真:桐竹勘十郎=伊藤菜々子撮影拡大桐竹勘十郎=伊藤菜々子撮影

 人形浄瑠璃文楽の2月公演が4日、東京・三宅坂の国立劇場小劇場で始まる。練り上げた古典から新演出の復活ものと多彩な演目がそろうが、一方で本拠地・大阪では未来への不安も。演者たちが公演にかける思いはひとしおだ。

 橋下徹大阪市長は昨年末、文化団体への補助金を見直す方針を示した。橋下氏は大阪府知事時代にも、文楽協会への補助金を削減している。竹本住大夫ら人間国宝6人を含む技芸員81人は、文化の尊重と慎重な論議を求める声明を発表、危機感を募らせる。

 「協会は我々全員が出演契約する団体。担う役割は大きく、立ちゆかなくなれば次代への芽が摘まれてしまう」と住大夫。橋下氏は府知事として一度だけ、文楽を見た。人形を遣った桐竹勘十郎は「一度で判断せず二度三度と足を運び、大阪発の世界無形文化遺産の価値を考えてもらえないか」と訴える。

 手遅れになる前に文楽の魅力を大勢に伝え、応援団になってもらわねば――。今回の第3部、近松作「日本振袖始」は一昨年に大阪で復活上演した話題作の東京初演だ。正体は八岐大蛇(やまたのおろち)の岩長姫が素戔嗚尊(すさのおのみこと)と死闘を繰り広げる。

 補綴(ほてつ)・補曲は「師・竹沢弥七の名演に憧れ続けた曲」という文楽三味線の人間国宝、鶴沢清治。立ち回りの補曲は大気を震わせるようで、原曲に新たな輝きを加えた。生きたのは市川猿之助演じる歌舞伎版で演奏した経験だ。「派手に派手に、と盛り上げる。大いに参考になりました」

 岩長姫を遣うのは勘十郎。日本舞踊の尾上墨雪が心情を語りつつ舞い、振り付けてくれたという。「姫が抱く美しい女への妬(ねた)み、憎しみ。どんな曲調の時も心の底に蠢(うごめ)く闇を忘れず、情緒を大事に演じたい」。大蛇の人形は今回、石見神楽をモデルに新調。頭の部分を若手がかぶる、文楽には珍しい形式で遣う。

 住大夫は第2部で「義経千本桜」すしやの段を語る。幾度も演じ、定評があるが、満足したことはないという。「師の山城少掾(しょうじょう)は京都から大阪の劇場に通う電車の中、語る段を小声で練習し続けた。夜中に笑い声がして、見るとおやじ(先代住大夫)が布団の中で笑い薬の段を稽古していた。芸は、磨くほど到達点が遠ざかる。文楽300年、先達の気の遠くなる努力で築き上げた情の世界を、未来につなげねばならんのです」

 第1部は午前11時で「彦山権現誓助剣(ちかいのすけだち)」。午後2時半の第2部はほかに「五十年忌歌念仏(ねぶつ)」、同6時半の第3部は「菅原伝授手習鑑(かがみ)」も。20日まで、5700〜1500円。電話0570・07・9900(劇場チケットセンター)。(西本ゆか)

検索フォーム

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介