現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 舞台
  4. 落語
  5. 記事

視線、しぐさ…表現力を落語で学ぶ 小学生にプロが指南

2010年5月26日

写真拡大熱々の肉まんをほお張るしぐさを林家きく麿(まろ)さんに教わった=東京都世田谷区、山本裕之撮影表紙拡大「じゅげむ」

 高座に上がって小咄(こばなし)を一席。熱々の肉まんをほお張る様子を熱演――。言葉やしぐさで物語に引き込む落語の世界。プロの指南で挑戦した小学生たちは、笑ってもらう喜びを肌で感じていた。

 赤い毛氈(もうせん)が敷かれた高座。座布団に正座した広松萌さん(7)は、おじぎをすると、少し緊張気味に切り出した。

 「お姉さん何してるの」

 「今、お化粧してるのよ」

 「ふーん、何でお化粧するの」

 「きれいになるためよ」

 「じゃあ、何できれいにならないの」

 ほおに白粉をはたくしぐさを交えて広松さんが熱演すると、笑いと拍手が起こった。

 東京都内の世田谷文学館で8日にあったワークショップ「ことのは はくぶつかん」の一コマだ。参加したのは小学1年生から6年生まで19人。落語家の林家きく麿(まろ)さん(37)が指南役を務めた。

 藤井汐音(しおね)さん(8)が披露したのは、こんな小咄だ。

 「あー、あと100円さえあればなあ」「100円くらいなら私が貸しましょうか」「ありがとうございます。これで貯金が1億円になりました」

 「話し手が替わる度、視線を左右に切り替えて」というきく麿さんの助言通り、きっちり演じ分けた。

 「ちょっとした話で人が笑ってくれるとわくわくする。そんな体験をふだんの生活に生かしてほしい。ユーモアは楽しく暮らしていくための潤滑油。お父さんとお母さんがけんかしていたら、小咄で仲裁してもいいしね」ときく麿さん。

 落語の基本となるしぐさも伝授された。扇子を箸(はし)に見立て、そばをすするしぐさをする子どもに「どんぶりは、そんなに大きくないんじゃない?」ときく麿さんが問いかける。一つひとつ丁寧に頭の中で想像して演じないと、見ている人に伝わらないからだ。

 「あちちっ」と顔をしかめながら演じた檜木礼君(8)は、腕にしたたる肉まんの肉汁をなめるしぐさが板についてきた。

 ワークショップは今回を皮切りに連続4回。今後、ダンサーや絵本作家らを講師に招く。「活字離れやコミュニケーション不足がいわれるなか、ことばを通した遊びや学びの体験を同じ仲間で重ねることで、気持ちを伝え、表現する力を育んでもらえたら」と企画した学芸員の佐野晃一郎さん(44)は話す。

 この日、きく麿さんが披露した落語は「ちりとてちん」。「知ったかぶりをする隣人を懲らしめてやろうというお話」に子どもたちは最後までくぎ付けで、時には床に転がって大笑いしていた。

 友達に好きな食べ物や休日の過ごし方を取材し、相手になりきる「他己紹介」に挑んだ石原朱理(あかり)さん(10)は、こんな感想を残した。

 「最初は、うわー恥ずかしいって思ったし、なかなか言葉が出なかった。高座に座ったとき、頭が真っ白になった。でも、1回やったら、もう1回やりたくなった。落語って楽しいねえ」(佐々波幸子)

■「じゅげむ」人気 体験講座も

 子どもたちにとって、落語は身近になってきた。川端誠さんによる落語絵本(クレヨンハウス)は、シリーズ14巻で110万部を超えた。1番人気は98年に出版された「じゅげむ」。03年からNHK教育テレビ「にほんごであそぼ」で「じゅげむ」が紹介されると人気が加速し、39刷40万部超に。

 「お笑いの達人になろう! (1)落語」(ポプラ社)は林家きく麿さんの師匠・林家木久扇さんが監修、小咄(こばなし)やしぐさ、古典落語まで演じ方を解説する。

 「ようこそ! おやこ寄席へ」(岩崎書店)を著した落語家の桂文我さんは「ぜひ、生の落語を味わってほしい」と呼びかける。7月17日に大阪・梅田の太融寺で、8月18日には東京の国立演芸場で「おやこ寄席」を開く。問い合わせは0598・36・0190へ。

 社団法人落語協会(03・3833・8563)は、依頼があれば小学生以上を対象に随時有料でワークショップを開く。天満天神繁昌(はんじょう)亭(06・6352・4874)は、学校向けの落語体験講座を開設。100人以上からで、落語独特のしぐさや小咄(こばなし)の紹介、和楽器の演奏や落語の実演。小中学生は1人千円、高校生は1人1300円。

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介