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ステージレビュー

芝居もショーもコミカルでスピーディーに 宝塚雪組公演

2009年8月1日

  • ライター・さかせがわ猫丸

写真拡大宝塚大劇場公演「ロシアン・ブルー」より=撮影・岸隆子

 スクリューボールコメディって、ご存知ですか? 野球の変化球・スクリューボールのようにストーリーがひねられて変化しながら、スピーディーに展開する喜劇のことです。

 7月31日に宝塚大劇場で開演した雪組公演、スクリューボールコメディー「ロシアン・ブルー −魔女への鉄槌−」の舞台は1937年。まだ米ソが対立する以前のモスクワに、水夏希(みず・なつき)さん演じるアメリカ下院議員のアルバートが、レビュー団を率いてやってきました。しかし、「鉄の女」と呼ばれるイリーナがレビュー上演を許しません。イリーナを演じるのは、これがトップ娘役のお披露目となる愛原実花(あいはら・みか)さん。キリッとした表情が、いかにも隙をみせない厳格な女性役人らしくて、まさにハマり役。発声も美しく、巧みな演技力を見せつけてくれます。

 彩吹真央(あやぶき・まお)さんは、アルバート役の水さんにキザな笑顔「キラースマイル」を作らせたり、時には厳しく諌める秘書のヘンリー役。水さんと彩吹さんはともに色気があり、息もぴったりで、トップ・2番手コンビの世界が最近ますます成熟してきました。そういえば彼女たちはかつて、花組公演「タンゴ・アルゼンチーノ」の新人公演で同じくコンビを演じ、その完成度の高さから、「伝説の新公」とファンの間で話題になったこともありました。

 実は魔法使いの末裔でもあるアルバートとヘンリー。宿敵イリーナを攻略するために、今こそ魔法を使うときだと、ヘンリーはアルバートに惚れ薬を渡します。ここは2人が組んだコンビの魅力が光る印象的なシーンです。一方、イリーナも魔女の末裔で、こちらも上司から惚れ薬を手渡されます。こうしてアルバートとイリーナは互いに薬を飲ませるために接近するのですが、ふとした間違いで、お互いが自分の薬を飲んでしまったから、さあ大変!――

 アメリカのレビュー団とソ連の劇団が対抗するように繰り広げるダンスシーンは「ウエスト・サイド・ストーリー」のようでイカしてるし、音月桂(おとづき・けい)さん演じる演出家・グリゴリーを中心としたタップダンスのシーンも見ごたえがあって迫力満点。

 とにかく話がテンポよく展開し、笑いのシーンもたっぷり。ラストシーンは、アルバートとイリーナの世界をしっとりと描いて幕を閉じました。

 ショーの『RIO DE BRAVO!!』は上演時間55分。芝居と連動しているかのように、こちらもスクリューボールのように変化に富んだ構成でした。ピンクの制服に身を包んだ派手なパイロット音月さんを筆頭に、キャプテン&キャビンアテンダントたちが、陽気に旅の始まりを告げます。「感動の乱気流、興奮の暑気あたりにはご注意ください」というアナウンスがナイスで、これから何が起こるのか、ワクワクせずにはいられません。

 まずはリオデジャネイロへ。ここでは彩吹さんと愛原さんが中心となりますが、なんと彩吹さんの歌が、沢田研二さんの「OH!ギャル」。思わず懐かしさに悶絶し、こんなにいい歌だったのかと、新鮮な感動さえ覚えました。そのあとは黒スーツに赤いネクタイ、赤いシャツ、赤い靴、サングラスという現実の男性にはありえない、でも男役だから許せるスタイルで、これでもかとキザッた水さんが登場。思わずカッコイイーーと心の中で叫んでしまいます。基本的に水さんはなんでも素敵ですが、今回のイチ押しは、幕が一気に落ちる演出後のリーゼント&光沢ブラウスの群舞です。シンプルな衣装なだけに男役ならではのセクシーさが際立ち、トップと2番手が組んで踊るという、宝塚のショーでは結構人気の高いシーンとなりますが、これがなぜか短いんです。もっと長く見たいと焦らされるのは、リピートを呼ぶ作戦でしょうか。罠にはまってしまいそうです。

 サッカー少年たちのシーンでは、宙組から移籍してきた早霧せいな(さぎり・せいな)さんがメインとなって踊ります。涼しい目元でかなりの二枚目っぷりをここ雪組でも発揮していました。ほかにもベルばらの騎士みたいなシーンがあったり、彩那音(あやな・おと)さんのキュートな女性警官が可愛かったり、シーンごとにストーリーがあって、次に一体何が出てくるのか最後までワクワクが止まりません。「キャリオカ」などおなじみの曲がたくさん出てくるのも嬉しいです。

 歌劇団のHPでも予告されていた舞台小道具の「ポンポン」は、目の覚めるようなキラキラ感。ポンポンを使ったダンスはすぐに覚えられそうな簡単なものなので、観劇の際に自前のポンポン持参で、客席に降りてきたタカラジェンヌのみなさんと一緒に踊ってみると、何倍にも楽しめそうです。ポンポンはグッズ販売の「キャトルレーヴ」で発売(500円)。

 芝居もショーも、とにかく楽しい! 仕事や勉強で疲れた心と体を癒すのに、まさにぴったり。真夏の暑さに負けないほど熱い雪組の舞台を体感して、一気にストレスも解消しちゃいましょう。

     ◇

【公演案内】 スクリューボール・コメディ「ロシアン・ブルー」−魔女への鉄槌− 作・演出/大野拓史 ラテン・ロマンチカ「RIO DE BRAVO!!(リオ デ ブラボー)」 作・演出/齋藤吉正 〈宝塚大劇場〉:7月31日〜8月31日(詳しくは宝塚歌劇公演案内へ)/〈東京宝塚劇場〉:9月18日〜10月18日(詳しくは宝塚歌劇公演案内へ

筆者プロフィール

さかせがわ猫丸
大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コムに「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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