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ステージレビュー

法廷対決から心情ドラマへ、宝塚宙組「逆転裁判2」

2009年8月20日

  • 筆者:橋本正人

写真拡大宝塚宙組・宝塚バウホール「逆転裁判2」より=撮影・岸隆子    

 ゲームを原作にした宝塚歌劇の舞台「逆転裁判」の続編「逆転裁判2」が20日、宝塚バウホールで始まった。登場人物の髪型からBGMまで、ゲームの世界を忠実に再現した前作から半年。2作目はどう変化したのか。初日直前に行われた通し舞台稽古を見た。

 前作との一番の違いは、心情描写だ。前回は熱血弁護士・ライトと天才検事・エッジワースの攻防が前面に押し出された構成だったが、今回は一味違う。対決の構図は生かしながらも、勝つか負けるかだけでなく、登場人物の内面を深く掘り下げてゆく。

 主人公のライト(蘭寿とむ=らんじゅ・とむ)は、前作のヒロイン、恋人・レオナを失って悲しみに沈んでいるという設定。今回のヒロイン、ルーチェ(純矢ちとせ=じゅんや・ちとせ)には恋人・ローランド(七海ひろき=ななみ・ひろき)がいる。そしてルーチェの母親が殺人容疑で逮捕されたところからドラマが始まる。誰が悪で、誰が正義なのかは、杓子定規には決まらない。愛するがゆえに犯罪を犯す者、愛するがゆえに犯罪を告発する者、そして愛するがゆえに犯罪者の更正を信じる者。その揺れ惑う心情が、からみあい、逆転を繰り返し、キッチリとしたドラマになってゆく。

 蘭寿は2作続けての主演で、安定感が出てきた。前作ではゲームに登場するライト(日本語版名は成歩堂)そのものの熱血タイプだったが、今回は純情可憐な雰囲気が強まり、蘭寿の笑顔がピッタリくる。そして、そのライトの純な魅力を引き立てるのが、検事・エッジワースを演じる悠未ひろ(ゆうみ・ひろ)だ。前作でこの役を演じた七帆ひかる(ななほ・ひかる)は、貴公子然とした雰囲気で、キザな天才検事を好演した。今回、悠未は、七帆が演じた時よりも大人びた、渋い検事像を作った。悠未がエッジワースを大人びた魅力のある男として演じれば演じるほど、ライトの純情な輝きが増してゆく。

 そして特筆すべきはルーチェの恋人・ローランドを演じる七海。瞳で演技するというのだろうか。何も言わず、涼やかな目もとでスッと立っているだけなのに、瞳の奥に秘めた情念を予感させる。ローランドが怒りを爆発させて「俺の親父を返せ」と絶叫するシーンは、このドラマの白眉だ。

 心情描写ばかりでなく、ゲームっぽい楽しさも健在。ムチを振り回す女性検事・カルマ役の藤崎えり(ふじさき・えり)は、机に打ちつけたムチの先が顔のあたりにはね返ってきてハラハラしたが、群舞シーンでのムチさばきは見事だ。前作では少々すべった感じのすることもあったギャグも、今回は蘭寿のボソッとした受け答えが絶妙で、キッチリ笑える。歌・踊り・芝居と、ゲームをやったことがない人も純粋に楽しめる内容になっているが、ゲームを冒頭だけでもやったことがあると、より暖かい目で見られるのも事実。劇場に足を運ばれる方は、ほんの少しでいいからゲーム(DSだけでなくPC版や配信版もある)に触れてから劇場に向かうことをお勧めしたい。

     ◇

【公演案内】バウ・ロマン「逆転裁判2」−蘇る真実、再び…− 脚本・演出/鈴木圭  〈宝塚バウホール〉:8月20日〜8月31日(詳しくは宝塚歌劇公演案内へ)/〈赤坂ACTシアター〉:9月5日〜9月15日(詳しくは宝塚歌劇公演案内へ


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