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ヅカ★ナビ!

真犯人も甘く切なく 宝塚宙組「逆転裁判2」

2009年9月11日

  • 中本千晶

写真拡大宝塚宙組・宝塚バウホール「逆転裁判2」より=撮影・岸隆子

 赤坂ACTシアターで上演中の宝塚「逆転裁判2」。人気のゲーム「逆転裁判」を舞台化して本年2月に上演された「逆転裁判」があまりに好評で、千秋楽にすでに続編の上演が決定していたものだ。

 宝塚の歴史のなかでも、ひとつの作品が「続編」という形で上演されるのは初めてのことらしい。当初はもちろん続編など想定していなかったからだろう。苦心の跡がうかがえたが、結果として、大枠としてはゲームファンのツボをきっちり押さえつつも、逆転劇の根幹に「タカラヅカらしさ」がさらに加わった仕上がりとなった。

 そのことを最も感じさせたのが、事件のキーパーソン、ローランド・スミス(七海ひろき)の存在である。「笑みの絶えない街づくり」を理想に掲げて不動産会社で働く二枚目ビジネスマン。その「一見」爽やかな風貌は、ゲーム版の重要キャラ、王都楼真悟を彷彿とさせる。タカラヅカ版オリジナルの登場人物だが、いかにもゲーム版にも登場してきそうなキャラにうまく仕上がっている。

 だが、ローランドは本作品のヒロイン、ルーチェ(純矢ちとせ)を心から愛しており、愛と正義感ゆえに過ちを犯す。ゲーム版ではちょっとないパターンだが、証言台での独白シーンでは共感して引き込まれるし、罪を償う覚悟を決めた彼の未来には救いも感じられる。このカタルシスは宝塚ファンにはむしろ馴染みがある。本作品の裏の主人公は彼といってもいい。

 このように本筋の逆転劇ではタカラヅカらしさを発揮しつつも、大枠の部分はゲーム版「逆転裁判2」第4話を踏襲、ゲームファンにとっても見どころ満載の舞台となっている。帰って来た御剣検事と成歩堂の再会、狩魔冥の衝撃のラストシーンなども、すべて再現されている。

 おなじみのキャラも健在だ。みそラーメン大好きなアシスタントのマヤ・フェイ(ゲーム版では綾里真宵・すみれ乃麗)、今回も大阪弁が止まらないロッタ・ハート(ゲーム版では大沢木ナツミ・美風舞良)、今回もいい味出している裁判長(風莉じん)。

 そして、一番の注目は何といっても天才女検事フランジスカ・ヴォン・カルマ(ゲームでは狩魔冥・藤咲えり)だろう。カンペキな仕草にカンペキな台詞回し、カンペキな鞭さばきでゲームファンの視線を釘付けにした。狩魔冥お得意の「お姫様風お辞儀ポーズ」もきれいに決まり、タカラヅカの娘役の本領発揮といったところ。

 七帆ひかるから代わってマイルズ・エッジワース検事を演じた悠未ひろは、ゲーム版の御剣検事のクールな中にも「くすっ」と笑える部分に焦点を当てた温かみのある役作り。時を経て一回り成長した、前作とは一味違うエッジワースをみせた。フェニックス(ゲームの成歩堂龍一・蘭寿とむ)とのボケツッコミぶりにもますます磨きがかかっている。

 空回り捜査でおなじみのおとぼけ刑事、ディック・ガムシュー(ゲームでは糸鋸刑事・春風美里)も、ニューヨークからカリフォルニアに「左遷」されての登場。だが、今回はなんと、ガムシュー刑事のオリジナルナンバーも増えた。イトノコ刑事ファンにはうれしい「昇格」だ。

 この人気キャラたちが、フィナーレではキラキラな衣装で登場し、さっそうと踊りまくるのはタカラヅカ版ならではの醍醐味。「ダイナミックに踊る成歩堂・御剣・糸鋸トリオ」や「御剣と狩魔冥のラブラブデュエット」なども、タカラヅカのフィナーレでしか決して観られない夢の競演だろう。

 さて、本作は、主人公フェニックス・ライト弁護士の再生の物語でもある。1幕のフェニックスは、恋人を失い、弁護士としての目標も見失い、失意のどん底にある。いつもの熱血ぶりはどこへやらのショボくれぶりには驚かされる。そのフェニックスに救いをもたらすのが、イタリア語で「光」という意味の名前を与えられた本作のヒロイン、ルーチェの役割だ。

 だが、フェニックスはルーチェに対しては兄のよう。終始温かな眼差しで見守り、その背中の後押しをし、自身はあくまで亡くなった恋人レオナの影を追い続ける。そんなフェニックスが何となく物足りない…。できれば、「逆転裁判3」で再びナルホド流の熱血ぶりがみたい、願わくば、新たな出会いを見つけて欲しいものだと思ってしまうのは私だけだろうか。

レベル:
★★★(上級編)
分野:
愛と夢の法廷バトル
対象:
「逆転裁判」をやりすぎて廃人化したことのある人、人生変わった人はぜひ!

ステップアップのための宿題:
タカラヅカ版では舞台をアメリカに移していますが、フェニックス・ライトやマイルズ・エッジワースなど主要な登場人物の名前は、ゲームの英語版からとっています。DSの英語版にトライしてみると、まるでタカラヅカの舞台を観ているような気分に。英語の勉強にもなり、一石二鳥かもしれません!?

     ◇

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プロフィール

中本千晶
フリージャーナリスト。67年山口県生まれ。東京大学法学部卒業。株式会社リクルートで海外ツアー販売サイトの立ち上げおよび運営に携わる。00年に独立。小学校4年生のときに宝塚歌劇を初観劇し「宝塚に入りたい」と思うも、1日で挫折。社会人になって仕事に行き詰まっていたとき、宝塚と再会し、ファンサイトの運営などを熱心に行なう。宝塚の行く末をあたたかく見守り、男性を積極的に観劇に誘う「ヅカナビゲーター」。
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