現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 舞台
  4. プレシャス!宝塚
  5. 記事

プレシャス!宝塚

最後まで自然体 宝塚月組・瀬奈じゅん

2009年10月13日

  • 日刊スポーツ記者・土谷美樹

写真ショーでは素足で華麗なダンスを披露する瀬奈じゅん(プロフィール)

 月組トップスター瀬奈じゅんのサヨナラ公演「ラスト プレイ/Heat on Beat」(11月9日まで)が開幕した。歌、ダンス、芝居とどれも抜きんでた実力派トップのサヨナラとあって、劇場は連日超満員。しかし、その熱気とは裏腹に瀬奈本人は「最後だから、という感じはまったくないんです。最後まで押しつけでなく、見た人がいろんな形容詞をつけて下さる男役でいたい」と自然体でのステージを繰り広げている。

 クールな瀬奈らしいラストステージだ。サヨナラ公演というと、それを思わせるセリフや場面がふんだんに盛り込まれることが多いが、タイトルこそ「ラスト」というものの、そんな感傷的な場面やセリフはゼロ。

 しかし、そこが逆に瀬奈らしい。本人も「セリフとか場面より歌詞にグッと来る部分が多い」と話す通り、難しい旋律の曲を丁寧に歌い込む姿が心に残る。「いろんな人の友情、愛情に触れて成長していく男を描いていて、歌もそういうものに感謝している歌詞が出てくるんです。私個人も今までいろんな人、例えばファンの方々であったり、劇団の人…。皆さんの事が思い浮かぶような歌詞で、心情的にかぶるんですよね」と真剣な表情で語った。

 同作は孤児院でピアノの英才教育を受けた青年がコンクールのプレッシャーにおしつぶされ、その後トラウマを抱えながらも成長していく姿を描いた作品。「下級生から“こういう役初めて見ます”って言われたので、最後の作品でも新たな自分が発見できるように演じられたらいい」と最後まで前進を忘れない。

 劇中ではピアノを実際に弾く場面も多く、その腕前は見事。しかし本人は格段「ピアノが得意」というワケではないらしい。音楽学校時代もピアノの成績は「40人中38番ぐらい」だったそうだ。「だから先生(演出家)にも聞きましたよ。“なんで私がピアノなんですか?”って。でもピアノを弾くということよりも、ピアノに対しての思い、芝居として心情的なモノを表現したいって言われたので、私にとっても“ピアノを弾く”ことに重きを置いているわけではありません」と話した。

 音楽学校時代から数えてほぼ20年。男役に没頭してきた。タカラヅカにしかない『男役』を瀬奈は「男性でもなく女性でもなく。夢の世界の生き物」と表現した。「もう、すごくやり尽くしました。燃え尽きましたよ(笑)。あっ、まだそんな事言っちゃいけないのかな」とジョークを交えて語ったが、まんざら冗談ではなさそうだ。

 ミュージカル大作「エリザベート」では狂言回しで暗殺者でもあるルキーニ、エリザベート、そして死トートと主要3役を経験した。これは史上初の快挙だ。タカラヅカの代名詞でもある「ベルサイユのばら」ではアンドレを「風と共に去りぬ」ではスカーレットを演じた。男役があこがれる役をことごとく自分のモノにし、女役の大役まで熱演。「やり尽くした」という言葉は本音に違いない。

 瀬奈は静かにしめくくった。「最後まで押しつけではなく、見てくれるお客様がいろんな形容詞をつけて下さる男役でいたい」。ファンの心にはいつまでもその姿が焼き付くはずだ。

 ◆「ラスト プレイ」 孤児院で育ったアリステア(瀬奈)はピアノの才能に恵まれ、孤児院の全面的なバックアップでレッスンに励んでいた。しかし大事なコンクール本番、あまりのプレッシャーから彼は演奏中に気を失った。それ以来、恐怖でピアノに近づくこともできなくなった彼は孤児院を飛び出した。
 ひょんな事から出会ったムーア(霧矢大夢)は刑務所を出てきたばかりの男。彼は裏社会の人間が持ち込む、いわく付きの美術品を売りさばき、大きな収益を上げていた。ムーアはアリステアを仲間に引き入れる。ピアノへの未練を心の底で感じながら、裏社会で生きていくアリステア。ある日、組織の闘争に巻き込まれたアリステアは大ケガを負い記憶を失った。

 ☆瀬奈(せな)じゅん 4月1日生まれ、東京都杉並区出身。東京文化高を経て92年「この恋は雲の涯まで」で初舞台。花組に配属となり98年「SPEAK EASY」で新人公演初主演。01年「マノン」でバウホール初主役。04年12月、月組に組替え。翌年7月、月組トップスターに。身長168センチ。愛称「あさこ」。

「プレシャス!宝塚」は、日刊スポーツ(大阪発行版)に連載中です。

日刊スポーツ ロゴ
Copyright 2009 日刊スポーツ新聞社 記事の無断転用を禁じます


検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内