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ステージレビュー

あの右京さんが踊ってる… 宝塚花組公演「相棒」開幕

2009年12月23日

  • 文・さかせがわ猫丸

写真拡大梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演「相棒」より=撮影・岸隆子

写真拡大梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演「相棒」より=撮影・岸隆子

 12月23日、シアター・ドラマシティで宝塚花組「相棒」が初日を迎えました。「相棒」といえば、テレビ朝日の超人気ドラマで、フリークとも言える根強いファンがたくさんいます。かくいう私もその一人。あの独特の世界観を、宝塚でどこまで表現できるだろう?という期待と不安で、この日を迎えるワクワク感も半端ではありませんでした。

 主役の杉下右京は、人材の墓場と呼ばれる警視庁特命係に追いやられた元キャリア警察官ですが、沈着冷静な話し方としぐさがこの「相棒」のシンボルとなっているほどの強烈なキャラクターです。

 演じるのはもちろんトップの真飛聖(まとぶ・せい)さん。なんと開演アナウンスからすでに右京さんになっています。そしていきなり壮一帆(そう・かずほ)さん演じる神戸尊とともに客席から登場しました。舞台では病院立てこもり事件が勃発。いろんなキャストが客席を行き来して、横から後ろからセリフが聞こえるので、お客さんも一気に物語の中に巻き込まれていきます。ドラマシティのような1階席だけの劇場ならではの臨場感あふれるこの演出、今回はふんだんに出てきますよ!

 事件は結局、予行演習だったのですが、ここからキャストがだんだん正体を現します。真飛さんの右京は、まさに水谷豊さんを宝塚風にしたらこうなる感じ!? きっちりなでつけた髪とふちなしメガネ、まっすぐ伸びた立ち姿にサスペンダーもよくお似合いです。壮さんの神戸は、及川光博さんのクールな雰囲気そのままでさすがの二枚目です。花組のトップ・2番手として公演を重ねてきて、息もぴったりな様子はまさしく「相棒」の雰囲気そのまま。

 そして未涼亜希(みすず・あき)さんが下手から「ヨッ」と登場したとたん、あきらかに角田課長だったので爆笑してしまいました。あえてキャスティングを知らないまま観劇に臨んだのですが、どの役柄の方も次々納得できてしまう。嫌味な伊丹刑事は真野すがた(まの・すがた)さんが、雰囲気の出し方からすでにハマッています。そして私が最も気になっていた鑑識課員の米沢さんは、華形ひかる(はながた・ひかる)さんが演じていました。ドラマでは六角精児さんが演じるマッシュルームの髪形&黒ぶち眼鏡の典型的オタク風情を、ちゃんとタカラジェンヌの美しさを残しつつ見事なまでに再現していて、感動さえおぼえます。

 冒頭から物語は小気味よく展開し、たちどころに客席を「相棒」色に染めていきますが、そこは宝塚。スーツ姿の刑事たちが、右京さんを中心にシャープなダンスシーンも繰り広げます。「あの右京さんが踊ってる…」というなんだか不思議な感覚と衝撃に包まれながらも、みんながいつもの舞台以上にカッコよく見えます。

 そして婦人警官たちが見逃せません。歌って踊ってはしゃいでと大活躍、カッコいいし可愛いしで、登場が待ち遠しくなるほど。お局様になっている初姫さあや(はつひめ・さあや)さん演じる麦子も実にキュートです。

 桜乃彩音(さくらの・あやね)さんは、今回の事件側重要人物。心臓移植で奇跡的に健康を取り戻したピアニスト、パリスを。その夫でマネージャーのノーマンは、愛音羽麗(あいね・はれい)さんが演じます。

 パリスはわがままで気の強い女ですが、かつて花組公演「明智小五郎の事件簿」で黒蜥蜴だった桜乃さんですから、これはお手の物でしょう。さらにピアノの名手・桜乃さんの生演奏も、少しだけ聴くことができます。愛音さんは誠実さの中にあやしさを漂わせる男がよく似合っていて、なかなかのセクシーっぷり。右京の元妻・たまきは、桜一花(さくら・いちか)さんがしっとりと演じ、とにかく警察側も事件を起こす側もみんながみんな魅力的で、あちこち観ないといけないので、とにかく忙しい。

 パリスの来日は、日米合作映画「トウキョウ コネクション」の音楽監督としての宣伝と、自らの命を救った臓器移植の支援コンサートなどのためでした。でもパリスは仕事を突然キャンセルしたり、飲んだくれてわがまま放題。ノーマンはそんな妻に愛想をつかし、パリスの調律師と不倫に走っています。そんな時、パリスのコンサートに爆弾予告が入り…。

 演出もクリスマスあり、秋葉原の風景に演歌チックな演出もあり、米沢さんのうんちくに感心したり、とにかく楽しい。夫を殺害した後で桜乃さんがピアノを弾きながら歌うシーンは、不気味な演出に背中がぞっとするなど、見どころも満載です。事件が絡むので長いセリフも多かったようですが、それもまったく感じさせません。社会問題に少し切りこんでいるあたりも「相棒」らしく、最後はぐっと胸が熱くなりました。

 ドラマのテイストをしっかり残して、宝塚の舞台らしく美しく描く。これはドラマが好きな人には面白さが何倍にもふくらみ、観たことがない方でも楽しめるのは間違いないと思います。

 ショーは一転して華やかなので、ここで再び「あの右京さんが?」と違和感が(笑)。でもこのギャップが大きければ大きいほど真飛さんのカッコよさが光るという、宝塚の醍醐味なんでしょうか。黒と白のシャープな衣装で、最後は真飛・桜乃・壮が大劇場並みの迫力で踊りますが、ここでもシャレた演出がありますので、お楽しみに。

 大満足…いや、まだ見落としていた部分があるかも。もう一度観てみたい! 宝塚のマジックに興奮した1日でした。

宝塚花組公演「相棒」

《大阪公演》2009年12月23日(水)〜2010年1月6日(水)、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ
《東京公演》2010年1月15日(金)〜2010年1月22日(金)、日本青年館大ホール
詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ
出演:真飛聖/ほか
(C)テレビ朝日・東映
原作・制作協力/テレビ朝日・東映
原案/輿水泰弘
脚本・演出/石田昌也

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