現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 舞台
  4. ステージレビュー
  5. 記事

ステージレビュー

宝塚は元日からゴージャス、星組「ハプスブルクの宝剣」

2010年1月1日

  • 文・さかせがわ猫丸

写真宝塚大劇場公演「ハプスブルクの宝剣」より=撮影・岸隆子

写真宝塚大劇場公演「ハプスブルクの宝剣」より=撮影・岸隆子

写真宝塚大劇場公演「ハプスブルクの宝剣」より=撮影・岸隆子

 2010年、元旦。宝塚大劇場公演は、星組「ハプスブルクの宝剣―魂に宿る光―」で幕が開きました。原作者・藤本ひとみさんの作品は、1993年に雪組で「ブルボンの封印」が上演されたこともあり、ファンのみなさんにはなじみ深いかもしれませんね。ゴージャスなコスチュームに彩られた華やかな舞台で新年を迎えますが、主人公の人生は波乱に満ちたもので、ともすれば悲劇的なストーリーです。さて、これをどう宝塚らしく仕上げてくれるのでしょうか。

 18世紀前半のヨーロッパ。ユダヤ人エリヤーフー(柚希礼音=ゆずき・れおん)が、大学でユダヤ教の律法をドイツ語の訳本に仕上げたところから物語は始まる。念願だった本の完成を手に勇んで故郷へ帰るが、ユダヤ人の未来を切り開こうとする彼の思いは、排他的な地元の人々には受け入れられなかった。打ちひしがれたエリヤーフーを恋人のアーデルハイト(夢咲ねね=ゆめさき・ねね)は優しく包み込むが、有産階級の娘である彼女との恋が許されるはずもない。彼女の許嫁に決闘を挑まれたエリヤーフーは、図らずも相手を殺めてしまい、追い詰められ川へと身を投げてしまう――。

 主人公エリヤーフーはもちろん主演の柚希さん。黒いロングヘアで影のある男を演出しますが、ずいぶん細くなってイイ男っぷりが上がっていました。トップスターになるとほとんどの生徒さんがスリムになり、精神的・肉体的な重責を伺わせますが、そのストイックさがまた「スター」としての輝きを増幅させます。宝塚の面白さは舞台だけでなく、演者が学生からプロになる過程にもありますが、トップスターになってからの変化も劇的で見逃せません。柚希さんはまだ大劇場2作目ですが、特にこの公演は歌も多く出ずっぱりで、そんな成長を実感させてくれました。

 夢咲さんは顔が小さくて首が長く、わっかのドレス姿はまさに生きたフランス人形。しかも背が高いので、8等身どころか10等身くらいありそうなバランスにうっとりしてしまいます。今回はアーデルハイトとマリア・テレジア(テレーゼ)の2役を演じますので、ドレスも豪華さを極め、思わずため息が出ます。

 2番手の凰稀かなめ(おうき・かなめ)さんは、テレーゼの夫フランツ役で、祖国を捨て婿として静かに生きる辛抱役。しかしブロンドのウエーブロングヘアがオスカルのごとく美しく、端正な容姿が金色のゴージャスな衣装とともに光り輝いています。

 エリヤーフーはオーストリア・ウィーンへ。瀕死のところをフランツの側近ジャカン(涼紫央=すずみ・しお)に助けられ、その出生を承知の上で臣下に迎えられていた。エドゥアルトと名前を変え、ユダヤと決別した彼はハプスブルク家のために忠義を尽くし、フランツからの信頼も厚い。そんなある日、フランツからテレーゼに紹介されるが、彼女がかつての恋人アーデルハイトに瓜二つであることに衝撃を受ける。テレーゼもまた、彼の瞳に宿る激しい炎に心を揺さぶられていた。だがエドゥアルトがユダヤ人であることを知るやいなや、その力を必要としながらも、彼の存在を決して認めようとはしなかった――。

 過去を捨て野望を秘める男となった柚希さんがテレーゼに迫るシーンはドキドキしますが、その後に冷水を浴びせるような仕打ちをする涼さんが心憎くてたまりません。涼さんはいつも渋い役で、しびれさせてくれますね。柚希さんの上司にあたるサヴォイア公子オイゲンを演じる専科の一樹千尋(いつき・ちひろ)さんは、男前の濃い容姿が外国人そのもので、いつもにも増して美しく、専科の人が入ると芝居にも重厚感が出ます。この公演で惜しくも退団される百花沙里(ももか・さり)さん、琴まりえ(こと・まりえ)さん、彩海早矢(あやみ・はや)さんらも活躍していますので、しっかりと目に焼き付けておかないといけません。

 エリヤーフーからエドゥアルトになった柚希さんは、オーストリア人として認められようとハプスブルク家のため必死に戦い続けますが、どうしても「ユダヤ人」であることからは逃れられず、自らの運命に翻弄され続けます。故郷を捨てても魂はさまよったまま、彼が本当に帰るべき場所はどこにあるのだろう。そしてその思いを抱くのは、実はエドゥアルトだけでなく…。

 宗教に基づく歴史的な背景は日本人にとってなかなか難しい話なのですが、そこはわかりやすく表現されているので、彼らの苦悩はひしひしと伝わってきます。そして主題歌が特にすばらしいと思ったら、シルヴェスター・リーヴァイ氏の作曲でした。名作「エリザベート」を生みだしたリーヴァイ氏とハプスブルク家のストーリーとくれば、宝塚ファンの琴線にガッツリ触れてくることでしょう。原作では悲劇的なエンディングも、宝塚では美しく幕を閉じますので、存分に余韻に浸れますよ。

 ショーは、グラン・ファンタジー「BOLERO」。柚希さん演じるロメロという青年が、一羽の鳩を追う物語になっています。季節が変わり、国が変わるごとにシーンが展開し、都会あり、迷宮あり、アフリカありと見どころ満載。そして圧巻は「愛のボレロ」です。アルハンブラ宮殿を模した舞台が黄金に染まり、迫りくる音楽に乗せて、柚希さん中心の群舞が弾け、迫力満点! これはぜひ劇場で体感してください。

 2010年の観劇始めは、ダイナミックな星組で。柚希さんの包容力で、初夢を楽しみましょう。

宝塚星組公演「ハプスブルクの宝剣 −魂に宿る光−」「BOLERO」

《宝塚大劇場公演》2010年1月1日(金)〜2010年2月1日(月)
詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ
《東京宝塚劇場公演》2010年2月12日(金)〜2010年3月21日(日)
詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ

スター★ファイル

宝塚OGのインタビューなど掲載

 宝塚OGを中心とした舞台人へのロングインタビューを「スター★ファイル」コーナーに掲載しています。「宝塚退団後初コンサートへ 安蘭けい稽古場インタビュー」「オペラ出身の注目の新星 田代万里生ロングインタビュー」「春野寿美礼が主演『ファニー・ガール』制作発表全文 」など。スター★ファイルの記事本文を読むにはアサヒ・コム プレミアム・ベーシックパック(月額525円)の購読が必要です。

⇒スター★ファイル 記事一覧へ


検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内