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ステージレビュー

安蘭けい20周年コンサート「箱舟」 繊細な恋を描く

2010年6月12日

  • 文:岩村美佳

写真拡大安蘭けい 箱舟 2010より=(C)田中亜紀

写真拡大安蘭けい 箱舟 2010より=(C)田中亜紀

写真拡大安蘭けい 箱舟 2010より=(C)田中亜紀

写真拡大安蘭けい 箱舟 2010より=(C)田中亜紀

写真拡大安蘭けい 箱舟 2010より=(C)田中亜紀

写真拡大安蘭けい 箱舟 2010より=(C)田中亜紀

 安蘭けい舞台生活20周年を記念したコンサート「安蘭けい 箱舟 2010」が15日まで銀河劇場で開かれている(兵庫公演は、17日から)。演出は宝塚出身の荻田浩一。歌劇団生徒、演出家と立場は違えど、ほぼ同じ時期に「宝塚」という夢の世界で、上に向かって歩んできた道のりにおいて「仲間」と呼び合う気心のしれた2人。2人がタッグを組んでオリジナル作品を作ると聞けば、期待も高まる。ふたを開けてみると、宝塚時代の荻田のショーを思い出すようだ。どこか退廃的で、嘆美で、妖しくて…。わかるようでわからないような、その感覚がまた心地よい。心の繊細な、あいまいな、柔らかな部分をそっと触れられているような心地よさに、何かが溶けていくような感覚がたまらない。

 その世界を表現する役者が揃った。それぞれが持つ美しい陰の魅力が安蘭を中心に融合していく。それを誘導していくのが荻田。1部はストーリー仕立てのショー。SIDE Sでは武田真治が、SIDE Kでは浦井健治がスペシャルゲストとして出演。安蘭演じる「さすらいの貴婦人」がそれぞれの青年と恋に落ちる。そしてゲストダンサーの西田健二がストーリーテラーとして「箱舟」を進むべき方向へ導いていく。幕が開くと、古い城壁に囲まれた海賊船のような舟が現れた。その上に「さすらいの貴婦人」が佇んでいる。そして「箱舟」を歌う。そこへ辿りついた青年はひとめで貴婦人に心惹かれる。セリフをかわすことはない。SIDE Sではサックスが青年の心の声のようだ。貴婦人は歌で、青年はサックスで、セッションしながらお互いを知り、恋に落ちていく。SIDE Kでは青年の心の声が聞こえてくる。貴婦人と青年は歌で、お互いの声をあわせながら触れ合い、恋に落ちていく。そして、貴婦人は歌で、ダンスで、表情で、そして瞳でその思いを綴っていく。

 武田のサックスと安蘭の声が重なると深みが増してくる。武田はまっすぐに、無邪気に、向かっていく。それを受け止める安蘭には母性のような大きな愛をも感じられる。対して、少し甘さの香る浦井の雰囲気に大人の女の余裕をも感じさせる安蘭。都会的なクールな大人の恋を匂わせる2人。安蘭の声と浦井の高めの声とが重なるとなんとも心地よい響きだ。最後に青年が歌う曲は、安蘭が大切にしている曲。武田は「The Rose(『ICARUS』より)」浦井は「Blues Requiem(『凍てついた明日』より)」。安蘭の声で聞き慣れた名曲が男性の声で新鮮に、新たな魅力をまとい、広がっていく。

 2部は歌で綴るコンサート。さまざまなジャンルの曲を安蘭がゲストが歌う。リボンの騎士に扮した安蘭が登場。軽快に、キュートに歌う。一転して、「Maybe This Time(『キャバレー』より)」。「Don’t Cry For Me Argentina(『エビータ』より)」(回によって「I Don’t Know How To Love Him(『ジーザス・クライスト・スーパースター』より)とどちらかを歌う)をドラマティックに歌う。ゲストとのフリートークを挟み、デュエット。武田とは「It’s A Dangerous Game(『ジキルとハイド』より)」。大人の恋の駆け引きを歌う。浦井とは「All I Ask Of You(『オペラ座の怪人』より)」。互いに惹かれ合うピュアな愛を歌う。それぞれゲストのリクエストで曲を決めたそうだが、2人の個性が最大限に生かされ、またその魅力の違いがわかりやすく現れた場面だ。安蘭は真逆ともいえる「役」を見事に演じ分けていた。続いてゲストのソロ。過去の作品より、武田は「If I Cannot Love(『トライアンフ・オブ・ラブ』より)」、浦井は「サラへ(『ダンス・オブ・ヴァンパイア』より)」を歌う。「I Gotcha(『フォッシー』より)」はダンサーも加わって舞台が一気に華やぐ。次は6月2日に発売になった安蘭のCDにも収録されているオリジナル曲「優秋〜ゆうしゅう〜」。この曲は「平城遷都1300年祭」のテーマ曲となっていて、11月7日のフィナーレでも歌うことが予定されている。そして「秋」つながりから「秋桜」へ、「プレイバックPart2」へと続く。山口百恵のクールビューティーのイメージが安蘭にはまる。コンサートも終盤へ。「ラストダンスは私と」では西田とデュエットダンスをおしゃれに踊る。そして、「最後のダンス(『エリザベート』より)」。安蘭×武田、安蘭×浦井、トート×トートの「箱舟」限定バージョンだ。男性と対等に、いやもしかしたらそれ以上に「男性らしい」安蘭トート。ボルテージも最高潮で、会場からはこの日一番の歓声と拍手。2倍の迫力のトート達に喝采を送る。最後は「I’m Here(『カラー・パープル』より)」で幕となる。アンコールは「ひとかけらの勇気(『スカーレット・ピンパーネル』より)」。折しも東京宝塚劇場では月組公演「スカーレット・ピンパーネル」が始まった。2年前の安蘭パーシーを思い出す。

 初日のスペシャルゲストは当日までシークレットとなっていた。誰が…?と思っていたら浦井が登場。「あれ? 今日は『K』?」。すると2部には武田がサックスで登場。どちらか1人しか出演しないはずが、「スペシャルゲスト」として2人が揃った。どちらのバージョンも武田、浦井それぞれの「らしさ」と安蘭がいい化学反応をおこし、「箱舟」の世界を広げている。

◆安蘭けい 箱舟 2010

《東京公演》2010年6月2日(水)〜6月15日(火)、天王洲 銀河劇場
詳しくは天王洲 銀河劇場の公演案内へ

《兵庫公演》2010年6月17日(木)〜6月19日(土)、兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
詳しくは梅田芸術劇場の公演案内へ

スター★ファイル

武田真治さんインタビュー全文掲載

 「安蘭けい 箱舟 2010」にスペシャルゲストとして出演している武田真治さんのインタビュー全文を「スター★ファイル」コーナーに「デビュー20年武田真治ロングインタビュー」として掲載しています。スター★ファイルの記事本文を読むにはアサヒ・コム Astand・ベーシックパック(月額525円)の購読が必要です。

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