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ステージレビュー

躍動と熱気 宝塚「Dancing Heroes!」

2011年1月8日

  • 文・さかせがわ猫丸、写真・岸隆子
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写真:宝塚バウホール公演「Dancing Heroes!」より=撮影・岸隆子拡大宝塚バウホール公演「Dancing Heroes!」より=撮影・岸隆子

 月組公演バウ・ダンシング・スペクタクル「Dancing Heroes!」が、1月8日、宝塚バウホールで初日を迎えました。ダンスの名手・桐生園加(きりゅう・そのか)さんを中心に、月組の若さあふれるメンバー18人で、熱いダンス・パフォーマンスを繰り広げます。徹底的にダンスで特化した公演は、ふだんのお芝居とはまた違った魅力があり、上演される数も少ないだけに大変人気があります。桐生さんのポーズがピタリときまるポスターもイカしてましたね。

 桐生さんといえば花組時代から、もはや職人ともいえるダンサーで名をはせています。いわゆるトップ・2番手・3番手といった路線でお芝居の中心人物を演じるわけではありませんが、味のある演技で物語を引き締め、ミュージカルにかかせないダンスシーンやショーではひときわ輝いてきました。宝塚の生徒さんはみなダンスが上手ですし、個性は人それぞれあっても、それほど技術に差があるとは思えないのですが、桐生さんは別で「何かが違う」と感じさせてくれます。そんな桐生さんがついに真ん中に立つ…組を超えて注目が集まる公演となりそう。

 題名にあるように、確かにみんながヒーローとなっていました! 2部構成、全17場でとにかく全員が激しく踊る踊る。オープニングは白い衣装でウオーミングアップしているシーンから。現実と舞台をリンクしていて、そこからだんだんと舞台の世界へと入り込んでいきます。赤い靴を象徴したシーンでは不思議なムードを漂わせ、タンゴをしっとりと堪能したあとは厳しい戦場へ。戦禍の兵士たちが一転、アメリカンロックに変化するシーンでは、ミリタリールックに身を包んだ桐生さんの銃が一瞬にしてギターに変わるという手品のような場面もあります。ほかにも手話を交えたダンス、前衛的な白鳥の湖、パリのレビューなどなど、どのシーンもストーリーがあってメッセージ性も強く、見ごたえがあります。

 1幕の締めには巨大な和太鼓が登場し、桐生さんが男前なバチさばきを披露。最後は全員がそれぞれの太鼓を打ち鳴らし、バウホール全体が響き揺れるほどの迫力で圧巻でした。 MCもあって、桐生さんのお相手に日替わりで男役と女役が登場しトークするので、ふだん前に出てこない若手の素顔がのぞけるのも面白いですね。

 終始、ほとばしる若さで全身全霊かけて踊りまくる若者たち。ほんの一瞬ですら気を抜く間もなく舞台に出ずっぱりですから、これだけの作品を完成させるにはどれほどお稽古を積んだことだろうと、思わず気が遠くなるほどでした。MCでクリスマスもお正月もなかったと語っていたのも納得です。

 桐生さんは先日「体年齢」が23歳と判定されたそうで、「18歳から23歳の若いメンバーでやってます」と堂々宣言(?)していましたが、やっぱりみんなと一緒に踊っていても、一人だけ明らかに違う。視線の流し方、ポーズの決め方一つでも、指先にまで神経が行き届いているのがわかります。黒燕尾でよく登場する、ただ右手を差し出すだけの何気ない決めポーズ。そのカッコよさに、重ねてきた年月が見えるよう。これから羽ばたいていく若者たちを率いて、舞台に立つことの意味、宝塚の男役としての姿を自分の背中で教えようとする、そんな彼女の心意気がビンビン伝わってくるステージでした。

 そして最後の最後、ただ一人で踊った「奇跡」には、理屈ではない表現力に圧倒され、胸を揺さぶられました。歌に感動するように、ダンスでも深い感動を与えてくれる。これがプロの力なんでしょうね。これからの宝塚にも、こんな職人気質の人がもっともっと育ってきてほしいと改めて感じました。

 ちなみに桐生さんの素顔はとてもあっさりしたしょうゆ顔です。それがメイクをするとバリバリの宝塚フェイスになる劇的な変化もすごい。その素朴な優しい素顔もぜひ知っていただけたら、その変貌ぶりにますます魅かれてしまうかもしれません。

◆Dancing Heroes!(ダンシング ヒーローズ)

《宝塚バウホール公演》2011年1月8日(土)〜2011年1月18日(火)
詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ

スター★ファイル

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筆者プロフィール

さかせがわ猫丸
大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コムに「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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