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ステージレビュー

あの大ベストセラーを舞台化! 「銀河英雄伝説」開幕

2011年1月9日

  • 文・中本千晶 写真・仲宗根美幸
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写真:舞台「銀河英雄伝説」より=撮影・仲宗根美幸拡大舞台「銀河英雄伝説」より=撮影・仲宗根美幸

 1982年の刊行以来、累計1500万部を売上げた大ベストセラー「銀河英雄伝説」。その後アニメや漫画、ゲーム等にもなり、今でも根強い人気を誇る。そして2011年、ついに舞台化が実現。ファンの熱い視線に見守られながら、7日、青山劇場にて初日の幕を開けた(16日まで)。

 物語は今から約1500年後の未来の話。そこでは人類が宇宙空間に生み出した2つの大国、銀河帝国と自由惑星同盟が、終わりの見えぬ戦いを繰り広げている。だが、「第一章」と銘打たれた今回の舞台は銀河帝国のみ。帝国側の人間模様を中心に、宇宙を手に入れる野望を抱く金髪の美青年ラインハルトと、帝国の皇帝、門閥貴族との権力闘争を中心に描かれる。自由惑星同盟は、外敵として台詞の端々で語られるのみだ。

 自由惑星同盟には、じつはヤン・ウェンリーという知将がいる。帝国のラインハルトと同盟のヤン、生き方も性格も対照的な2人の天才が繰り広げる対決こそが、この小説の醍醐味なのだが…。

 「不敗の魔術師ヤン」の登場しない銀英伝が果たして成り立つのか?…という疑問を多くのファンが持ったことだろう。だが、これが以外にも新鮮だった。ラインハルトの「完全なる勝利」がすんでのところで阻まれるたびに、名前だけが囁かれる「ヤン・ウェンリー」。いったいどんな人物なのか、いやがおうにも興味がかき立てられてしまう。おそらく、ラインハルトやキルヒアイスの胸のうちもこんな感じだったのかな、とふと思ったりした。

 ラインハルト役には「侍戦隊シンケンジャー」のシンケンレッドなどで人気の松坂桃李。舞台初主演への意気込みが、ラインハルトの上昇志向とも重なる。ともすれば好感を持たれにくいラインハルトというキャラだが、彼の弱い部分や茶目っ気のある部分などを緩急つけた芝居で自在に見せ、多面性のある魅力的な人物像につくりあげた。

 ラインハルトを影で支える親友キルヒアイス役には、NHK連続テレビ小説「わかば」で注目を集めた崎本大海。囲み取材で「舞台稽古終了後の(松坂)桃李くんの第一声が『おなか減った〜』だった、そのひとことに『やりきった感』があって、これはいい初日を迎えられるなと思った」と話していた。その様子が、まさにラインハルトを見守るキルヒアイスそのもの。常に優しさをたたえた穏やかな雰囲気が「動」のラインハルトと好対照だ。

 ラインハルトの姉で、皇帝の寵妃となるアンネローゼ役には、宝塚出身の白羽ゆり。髪型やドレスさばきの美しさは完璧で、宝塚時代にトップ娘役として数々のヒロインをこなしたキャリアを存分に発揮した。品格のなかに、皇帝をも溺れさせる大人の女性の魅力もたたえ、皇帝が彼女のためにラインハルトをとんとん拍子に出世させてしてしまうのもわかる気がした。

 そのアンネローゼと皇帝フリードリヒ四世(長谷川初範)、そしてキルヒアイスとの関係が少し深く描かれているのが舞台版の見どころ。そこからは理想の姉としての顔だけでなく、生身のひとりの女性としての顔も垣間見え、それゆえのラインハルトの複雑な心情…戸惑い、淋しさ、嫉妬心などが浮き彫りになってみえる。

 男勝りの貴族令嬢、ヒルダを演じたのは紅白歌合戦にも出場した人気ユニットAAAの宇野実彩子。「お稽古が紅白と重なったので、皆さんにすごくフォローしてもらった。緊張感のなかで自分を追い込めて、かえって良かった」という。出番は少ないが、最後に希望を与える存在だ。

 帝国軍を支える双璧の武将、ミッターマイヤーとロイエンタールには、それぞれ中河内雅貴に東山義久と、ミュージカルの舞台で実績のある2人がキャスティングされた。巨大な斧を振り回す豪傑オフレッサー(中村憲刀)との対決の場面での立ち回りが見せ場。2人を主人公とした「銀河英雄伝説 外伝 ミッターマイヤー・ロイエンタール編」も6月22日からサンシャイン劇場での舞台化がすでに決定している。

 冷徹な参謀、オーベルシュタインには、音楽の世界から舞台へと活躍の場を広げつつある貴水博之。淡々としながらも凄みを効かせて舞台をぐっと締め、新たな境地をみせた。

 猛将ビッテンフェルト役の吉田友一が、長身のイケメンながら、ちょっと抜けたところのある愛されキャラ風で目を引いた。ラインハルトと敵対する門閥貴族の筆頭、ブラウンシュバイク公爵の園岡新太郎は、アニメを意識したであろう暑苦しいメイクで悪役に徹した。一節歌うシーンがちゃんとあるのもミュージカルファンにはうれしいサービスだ。

 このほか、物語ラストのキーパーソン、アンスバッハに演技派の高山猛久、苦渋の選択を強いられる老将メルカッツに米米クラブのジェームス小野田など。また、アニメでラインハルトの声を担当した堀川りょうが、ラインハルトの父親役として特別出演、ファンを沸かせた。総じてキャステティングに納得感があり、かつ、演じ手が各キャラクターのイメージを大切に演じているのがいい。

 いっぽう、舞台化における最大の課題と考えられていた宇宙空間での壮大な戦闘シーンは、セリと照明、映像を駆使して、アンサンブルの群舞でみせる手法が取られている。「機動戦士ガンダムシリーズ」でも知られる三枝成彰の音楽がスペクタクルな雰囲気を盛り上げていた。

 アニメばりの迫力の戦闘シーンを期待した人には、やや物足りないかもしれないが、舞台という制約された空間では、こうなのかな、と思う。ただ、この表現手法だとアンサンブルの迫力がキモになるだけに、初日の段階ではまだ振りや発声にばらつきがあったのが残念。振付やフォーメーションがもっと洗練されてきたら、舞台版銀英伝ならではの宇宙空間の表現法が確立されるのかもしれない。

 また、各キャストの衣装や鬘などは、まだまだ工夫の余地がありそう。とくに、軍服のズボンの丈などは、微調整するだけでぐっと凛々しさが増すと思う。役者をそろえているだけに、続編があるならば、ぜひ改善して欲しいところだ。

 ラストは悲劇ながら、次回作を予感させる終わり方。引き続き第2章をみてみたくなる仕上がりであったと思う。いよいよ宿敵ヤン・ウェンリーの登場が期待される。

◆木下工務店PRESENTS 舞台「銀河英雄伝説 第一章 銀河帝国編」

《東京・青山劇場》2011年1月7日〜1月16日
詳しくは、公式サイトへ

◆舞台「銀河英雄伝説 外伝 ミッターマイヤー・ロイエンタール編」

《東京・サンシャイン劇場》2011年6月22日〜6月26日

スター★ファイル

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