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ステージレビュー

宝塚OGが魅せる任侠の世界 「次郎長三国志」

2011年1月25日

  • 文・中本千晶
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写真:舞台「次郎長三国志」より=撮影:ムトー清次拡大舞台「次郎長三国志」より=撮影:ムトー清次

写真:舞台「次郎長三国志」より=撮影:ムトー清次拡大舞台「次郎長三国志」より=撮影:ムトー清次

 1月21日、博品館劇場にて、宝塚OGによる「勢揃い 清水港 次郎長三国志」が開幕(30日まで)。榛名由梨、郷ちぐさ、汀夏子、瀬戸内美八、高汐巴、えまおゆう、と宝塚時代のトップスター経験者6名、東千晃、美雪花代、秋篠美帆、森奈みはるらトップ娘役経験者4名を含む17名が「勢揃い」した。

 原作は村上元三の小説、1950〜60年代に何度も映画化された、おなじみの次郎長一家の物語の舞台化だ。1974年に月組で初演された「ベルサイユのばら」の初代オスカル、榛名由梨が清水次郎長、雪組でオスカル役を演じた汀夏子が森の石松を演じる。

 第1幕は、個性豊かな子分たちのエピソードを交えながら、清水一家の深い絆をほのぼのと描く。第2幕から物語が急展開、次郎長の名代で讃岐金毘羅宮へと旅に出た石松が、その「ばか正直さ」ゆえの非業の死を遂げ、最後は清水一家による敵討ちとなる。

 清水次郎長の榛名由梨、派手な見せ場やコミカルな場面は石松をはじめとした他のメンバーのほうがむしろ多いくらいだが、暴れまわる子分たちの後ろでドンと構えることで、逆に親分らしい包容力を感じさせた。いかにも立役の得意な榛名らしい清水次郎長だ。

 いっぽう汀夏子の石松は、宝塚現役時代と変わらぬ瑞々しさ。子どものように純真な心根を持ち、誰からも愛される石松像を前半に作りこむことで、後半の悲劇を際立たせた。ラスト、髪を振り乱しての壮絶な死に様も見どころだ。

 次郎長の妻として一家を取り仕切り、石松のことを母のように世話を焼くお蝶には、榛名、汀、瀬戸内らと同時期にヒロイン役で活躍した東千晃。また、宝塚時代の榛名の同期、汀とともに雪組でトップスターをつとめた郷ちぐさが久々の舞台復帰、次郎長の義理の兄、江尻の大熊役として要所要所で舞台を締める。

 一家の参謀役、大政(瀬戸内美八)の秘められた過去。清水港のマドンナ、おせん(美雪花代)を巡る関東綱五郎(えまおゆう)と桶屋鬼吉(真山葉瑠)らのコミカルなさや当て合戦。ヤクザ者にしては少々弱気な小松村七五郎(高汐巴)と、気丈に夫を守る女房お園(秋篠美帆)の心温まる夫婦愛…などなど、役に相応しい見せ場がそれぞれに設けられているのもうれしい。

 読本作家のたまごで、じつは石松に想いを寄せるおみつ(森奈みはる)が、次郎長一家の「取材」を続けながら狂言回しの役どころもつとめ、明るく、ときに切なく舞台を引っ張るのが印象的だった。

 宝塚OGで構成される清水次郎長一家と敵対する都田一家には、7名の男性。終盤の敵討ちのシーンも、彼らの上手い「殺され方」のおかげもあって、女性だからといって見劣りしない迫力の殺陣となっている。

 そして、次郎長の宿敵となる都田吉兵衛には、大衆演劇の人気女形、竜小太郎。「流し目のスナイパー」としては初めての敵役への挑戦だそうだが、さすが悪の色気もたっぷり。この他に2役を演じ、お約束の男女早替わりもみせてくれる。

 じつは私、清水次郎長も森の石松も、名前だけは聞いていたが、どんな人なのかはまったく知らなかった。よけいな先入観がないせいだろうか、「宝塚で任侠物?」という違和感はまったくなく、アウトローな男たちのかっこいい生き様として普通に楽しめてしまった。次郎長や石松が、江戸から明治、大きく転換する時代のなかの庶民のヒーローだということも初めて知った。

 もちろん、昔からの宝塚ファンにとっては懐かしさいっぱい。時代を超えてスターが勢揃いして、任侠物という珍しいジャンルの芝居を見せてくれるという、またとない機会でもある。

◆ベルばらから次郎長へ「勢揃い、清水港 次郎長三国志」

《東京公演》2011年1月21日(金)〜30日(日)、銀座 博品館劇場
詳しくは、銀座 博品館劇場公式サイトへ

スター★ファイル

榛名由梨さん・汀夏子さん対談の全文掲載 

 「勢揃い、清水港 次郎長三国志」 に出演される榛名由梨さん&汀夏子さん対談の全文を「スター★ファイル」コーナーに「『勢揃い、清水港 次郎長三国志』に出演 榛名由梨・汀夏子、対談の全文」として掲載しています。スター★ファイルの記事本文を読むにはAstand・ベーシックパック(月額525円)の購読が必要です。ベーシックパックの購読は、こちらから。

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