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ステージレビュー

めくるめく宝塚の夢、「DREAM TRAIL」が開幕

2011年1月26日

  • 文・中本千晶、写真・岩村美佳
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写真:「DREAM TRAIL 宝塚伝説」より=撮影・岩村美佳拡大「DREAM TRAIL 宝塚伝説」より=撮影・岩村美佳

写真:「DREAM TRAIL 宝塚伝説」より=撮影・岩村美佳拡大「DREAM TRAIL 宝塚伝説」より=撮影・岩村美佳

 タカラヅカOGが一同に会する舞台というのは、出演者それ自体が売り物になっている場合が多い。だが、23日に開幕した「DREAM TRAIL 宝塚伝説」はそれだけでは終わらない。その絶妙な組み合わせによって、ひとつの世界観として成立している。なんと贅沢な舞台なのだろう(30日まで東京・青山劇場/2月3日〜8日 大阪・梅田芸術劇場シアタードラマシティ)。

 トップスター経験者5名、トップ娘役経験者が3名、このほかの出演者も在団中から歌やダンスの実力派として知られた選りすぐりのメンバーである。それがこの舞台においては、さらに生き生きと輝いてみえるのは何故なのか? それは、本作が目指す世界のなかの「役」を、それぞれが演じ切っているからではないかと思い至った。ただでさえ個性的な光を持つスターたちは、「役」を与えられたとき、演じる者として、プロとして、より強烈な輝きを放つのだ。

 開演アナウンスらしきフランス語が流れ、舞台にはパリの駅の構内を模したようなセット。客席はすでに、パリの街の空気が流れはじめている。幕が上がると、そこには謎めいた美しい車掌(朝澄けい)がいる。車掌にいざなわれ、旅行鞄を手にしたトレンチコートの紳士(涼紫央)がやってくる。

 やがて、さまざまな旅人たちが登場する。上品な婦人(初風諄)に可愛い娘たち(風花舞、大鳥れい)。そして、ひときわゴージャスな貴婦人たち(鳳蘭、安奈淳、杜けあき、麻路さき、春野寿美礼)だ。みんなが紳士(涼)のことを噂しあう。「ほかの誰とも違う、あの素敵な人はいったい誰かしら」と。そして緑の袴の少女やラインダンスの衣装の踊り子まで出てきて、コミカルに、キッチュに、タカラヅカの思い出話へとつながっていく。

 こうして1幕は、華やかなパリ・レビューの世界を旅する雰囲気。「モン・パリ」の舞台を再現したダンスシーンもある。極めつけの見所は、羽根を背負ったダルマ(手足の出た、水着のような形の衣装)姿でゴージャスに登場する、麻路さきの見事なプロポーションだろう。

 安奈淳、杜けあき、春野寿美礼という、各時代を代表する「歌うまトップ」が奏でる夢のハーモニーが聴けるのもこの作品ならでは。このほか出雲綾、未来優希のふたりがパワフルに歌をリードする。そして、杜の「スイート・タイフーン」でクライマックスとなったところで、幕間へ。

 「センセーション!」で始まる2幕は1幕とは少し変わってシックな大人の雰囲気。これまでのレビューのなかから懐かしの名曲が歌い継がれ、バックでは宝塚時代からダンスに定評にあったメンバーが踊る。その中心になるのが、風花舞。宝塚時代と変わらぬ、しなやかで切れ味の良いダンスを存分に見せてくれたのがうれしい。

 気になる日替わりゲストだが、1幕と2幕にそれぞれコーナーがある。とくに2幕は歌も日替わりなので要チェック。初日は紫苑ゆうが「ラ・カンタータ」、湖月わたるが「王家に捧ぐ歌」と、それぞれ印象深い舞台からの曲を歌った。他にゲストとして稔幸、姿月あさと、朝海ひかるが登場するが、それぞれ何の曲を歌ってくれるかも楽しみなところ。

 いっぽう、涼紫央と4名の娘役の宝塚現役メンバーは、「夢の世界」の象徴的存在として折々に登場。まるでガラスの箱に入ったかのような、タカラヅカ独特の「特別」観を醸し出す役割を果たしていた。自身もかつてはファンであり、「お稽古中から上級生の方々の歌われる宝塚の懐かしいメロディを聴いていて何度も涙した」という涼が、尊敬してやまないOGたちと踊るシーンもある。

 そして、トップオブトップはやはりこの人、鳳蘭。「私にとって宝塚歌劇団の生徒は皆、可愛い姉妹であり、娘であり、孫みたいなお嬢さんもいらっしゃる(笑)」と愛情込めて語る鳳は、歴代トップスターのなかにあってもなお揺るぎない、圧倒的な存在感でセンターに立つ。最後「風と共に去りぬ」から「サヨナラは夕映えの中で」で締めくくった。

 もうすぐ100周年を迎える宝塚歌劇の「夢の軌跡」が、ノスタルジックに、幻想的に、そしてちょっぴり耽美的につづられる…そのなかに、この人のこれが観たかった、聴きたかった!というファンのツボが満載。つぎは誰がどんな風に出てくるか、常に舞台中のすみからすみまで目を皿のようにして眺めたくなる舞台なのだ。

 そしてなにより感じたのは、この作品の演出を担当した荻田浩一氏こそが最上級のタカラヅカファンだということ。きら星のごときスターを自在に組み合わせて、めくるめく荻田ワールドが展開させるのは、さぞや演出家冥利に尽きる仕事だったに違いない…。

◆DREAM TRAIL 〜宝塚伝説〜

《東京公演》2011年1月23日(日)〜2011年1月30日(日)、青山劇場
《大阪公演》2011年2月3日(木)〜2011年2月8日(火)、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
詳しくは、梅田芸術劇場公演案内へ

スター★ファイル

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筆者プロフィール

中本千晶
フリージャーナリスト。67年山口県生まれ。東京大学法学部卒業。株式会社リクルートで海外ツアー販売サイトの立ち上げおよび運営に携わる。00年に独立。小学校4年生のときに宝塚歌劇を初観劇し「宝塚に入りたい」と思うも、1日で挫折。社会人になって仕事に行き詰まっていたとき、宝塚と再会し、ファンサイトの運営などを熱心に行なう。宝塚の行く末をあたたかく見守り、男性を積極的に観劇に誘う「ヅカナビゲーター」。

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