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ステージレビュー

お姫様気分、夢の世界に 宝塚「メイちゃんの執事」

2011年1月29日

  • 文・さかせがわ猫丸、写真・岸隆子
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写真:宝塚バウホール公演「メイちゃんの執事−私の命に代えてお守りします−」より=撮影・岸隆子拡大宝塚バウホール公演「メイちゃんの執事−私の命に代えてお守りします−」より=撮影・岸隆子

 星組バウホール公演「メイちゃんの執事―私の命に代えてお守りします―」が1月29日に初日を迎えました。原作は現在も連載中の少女漫画で、テレビドラマ化もされている大変人気の高い作品です。

 主演は、人気実力ともに急上昇中の紅ゆずる(くれない・ゆずる)さん。2番手には美弥るりか(みや・るりか)さん、3番手には真風涼帆(まかぜ・すずほ)さんと、現代の宝塚を象徴するようなスマート系イケメンがそろい踏みで、キュートなポスターそのままの、まさにリアル少女漫画が期待できるかも? 主人公の相手役は、音波みのり(おとは・みのり)さん。昨年の大劇場公演「愛と青春の旅だち」で新人公演の初ヒロインも演じた注目の娘役です。話題の作品でありながら、漫画もドラマもまったく観たことがなかった私は、なんだか申し訳ないような気持ちで臨みましたが、これがものの見事にハマってしまいました。

 のどかな四国の田舎町。うどん屋を営む両親と暮らす東雲メイ(音波)は、同級生の柴田剣人(美弥)とともに平凡な学生生活を送っていたが、ある日突然、事故で両親を亡くしてしまう。身寄りのないメイを引き取る決意をする剣人。だがそんな2人の前に突然、柴田理人(紅)が現れた。日本の政財界を牛耳る本郷グループ創始者金太郎の命を受け、本郷家の跡取りとして孫娘であるメイを迎えに来たのだと言う。理人は完全無欠のSランク執事、そして偶然にも剣人の兄だった。

 天真爛漫なメイと、学ラン姿のちょっと生意気な剣人は、本当にごく普通の学生たち。自転車で学校から帰る様子がユニークなのも、ほほえましくて新鮮です。最近の美弥さんは悪者だったり渋い役が印象的ですが、こういった若さあふれる明るい役はやっぱり自然でいい。でもどんな役をしても演技力にたけた人だなあと感じます。紅さんは細身のルックスに上品な執事スタイルがこれでもかというほど似合っていて、言うことなし。こんなカッコいい男性がいきなり現れて自分のためだけに仕えてくれるなんてありえないわと最初は斜めに見てしまうのですが、ずんずん物語の中に引き込まれていってしまい…。

 実の祖父・金太郎と感動の再会を果たすと、メイは跡取りとしてふさわしい教育を受けるため、究極の全寮制お嬢様学校・聖ルチア女学園に転校することになった。生徒には専属の執事がつくが、それがメイにとっての理人だ。メイに想いを寄せていた剣人も執事になると意気込むが、理人によって執事学校に送られてしまう。  聖ルチア女学園では庶民とはかけ離れた個性的なお嬢様たちと執事たちがいた。その中には、学園の頂点に立つ「ルチア」の称号を持つ本郷詩織(白華れみ/しらはな・れみ)もいる。メイが現れるまでは彼女が本郷家の後継者で、現在は忍(真風)を従えているが、元の執事は理人だった。やがて理人とメイの間には主従関係を超えた絆が生まれ始めるが、詩織がメイの存在を疎ましく思わないはずがなかった―。

 白華さんは儚い役が似合いますが、今回のような悪女役も上手です。真風さんは全身白で、白華さんと真っ白コンビでとても美しい。お嬢様たちと執事のペアがそれぞれ個性的で、そちらも要チェックです。

 今回は特に照明が効果的に使われていて、ヘリコプターがやってきたと思わせたり、詩織に操られ翻弄される理人のダンスがスクリーンに映し出されたり、斬新な演出で迫力満点。かと思えば、パラシュートで下降する剣人(?)や小型ヘリコプター、前述の自転車シーンなど漫画チックな演出もあります。休憩時間にも、幕に映された羊のイラストがまばたきしたり、ウインクするのでこちらもお見逃しなく。

 カッコいい男性がひたすら一途に優しくしてくれて、いざとなったら細マッチョになって自分のために戦ってくれる…どう考えてもありえない夢物語ですが、そこが少女漫画と宝塚の良さ。気がつくと思いっきりメイちゃんに感情移入して、胸がきゅんきゅんしていました。特に、メイとは一線を引いているはずの理人が、彼女のために口紅を調合したからと塗ってあげるシーンは最高潮にしびれます。

 これまで、情熱的なたくましい王子や、クールでニヒルな大人の男性でうっとりしてきましたが、今回はそれまでとはちょっと色合いの違う「草食系男子」。今の時代にマッチしていて、若手が主演をつとめるバウホール公演にピッタリハマっているのではないでしょうか。とにかく登場人物が美形ぞろいなのと、乙女心をくすぐるストーリーが、「動く少女漫画」である宝塚歌劇の真骨頂を引き出しています。もはや紅さんが理人以外の何者にも見えません。これぞお姫様気分、久々に夢の世界にどっぷり浸らせていただきました!

◆メイちゃんの執事−私の命に代えてお守りします−

《宝塚バウホール公演》2011年1月29日(土)〜2011年2月8日(火)
詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ

《日本青年館大ホール公演》2011年2月15日(火)〜2011年2月21日(月)
詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ

スター★ファイル

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筆者プロフィール

さかせがわ猫丸
大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コムに「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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