現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 舞台
  4. ステージレビュー
  5. 記事

ステージレビュー

名作の再演、タンゴで堪能 宝塚「ヴァレンチノ」

2011年3月9日

印刷印刷用画面を開く

Check

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

フォトギャラリー(公演別)はこちら→

写真:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演「ヴァレンチノ」より=撮影・岸隆子拡大梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演「ヴァレンチノ」より=撮影・岸隆子

 3月8日、大阪の梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで、宝塚宙組のミュージカル「ヴァレンチノ」が初日を迎えました。この作品は宝塚OGの杜けあき(もり・けあき)さんの代表作とも言える作品で、1986年に初演、1992年に再演されています。いずれも大変な話題を呼びましたし、いまや宝塚の巨匠ともいえる演出家・小池修一郎氏の処女作だったということもあり、ぜひとも見てみたい名作の一つでした。(文・さかせがわ猫丸、写真・岸隆子)

 主演はもちろん大空祐飛(おおぞら・ゆうひ)さん。トップ生活も充実する今、杜さんの渋くてダンディーなイメージを崩すことなく、さらに新しいヴァレンチノ像を作ってくれそう。

 1913年12月。ニューヨークの港にイタリアからの船が到着した。この地に降り立った18歳の青年ルディー(大空)は、自由の女神を眺めながら、ここでいつかオレンジの実る丘を手に入れる夢を誓う。いくつかの職を経た後、ニューヨーク1のダンスホール「マキシム」で女性客を相手にするナンバーワン・ダンサーとなったルディーだが、ある日、マフィアのソウル(悠未ひろ/ゆうみ・ひろ)の情婦との火遊びで命を狙われてしまう。カリフォルニアへと逃げたルディーは映画のエキストラとなるが、なかなか出番が見つからない。空腹に耐えかね、通りすがりの家の庭のオレンジを盗もうとしたところ、女主人であるシナリオライターのジューン(野々すみ花/のの・すみか)に見つかってしまった。制作中の映画「黙示録の四騎士」で「ラテン・ラヴァ―」を演じられる役者を探していたジューンは、ルディーがそのイメージとぴったりだと気付く。

 イタリアからやってきたルディーは、おせじにもきれいとはいえないスタイルですが、大きな夢に胸をふくらませ、希望に燃える純朴な青年です。黒いタキシードを着こなし、タンゴを踊る売れっ子ダンサーになっても、マフィアから逃げて再びボロを着た貧しい青年になっても、天真爛漫な雰囲気は変わりません。オレンジ泥棒をとがめられてジューンと出会ったシーンでは、そんなルディーの魅力がよく表れていました。彼のカラリとした風のような爽やかさは、ジューンが求めていた役者を見つけた喜びだけでなく、彼女自身の心まで奪われてしまったよう。どちらかというと影のあるタイプの大空さんだけに、この可愛さを感じさせる演技がなんともいえず、くすぐります。

 野々さんの表現力はさすがの一言です。「銀ちゃんの恋」で小夏を、「誰がために鐘は鳴る」でマリアを、そして今回はハリウッドのシナリオライターに…。毎回、役そのものに見える野々さんって、本当にすごい! ルディーを追いこんだソウルを演じる悠未さんは、長身を生かした圧倒的存在感で怖〜いマフィアになり切っていて、いい味を出しています。

 ジューンから映画の宣伝係ジョージ(春風弥里/はるかぜ・みさと)に紹介されたルディーは、見事、役者ルドルフ・ヴァレンチノへと変身を遂げた。映画は空前の大ヒット。世の女性たちの憧れの的となったルディーは、ロシアの大女優ナジモヴァ(純矢ちとせ/じゅんや・ちとせ)と共演することとなった。その撮影現場でルディーは、ハリウッドきっての新進デザイナー・ナターシャ(七海ひろき/ななみ・ひろき)と出会う。2人は互いにインスピレーションを感じ、急速に仲を深めていく。そんな様子に、ルディ―の成長を見守り続けてきたジューンの心は波立っていた…。

 ジョージ役の春風さんは、調子がいいながらも優しい人柄をうまく演じています。そして今回、最も引きつけられたのが七海さん。背が高いので一目で男役さんだとわかるのですが、非常に美しいのです。男役がやる女役の理想形といった感じ。気が強くて聡明で、スタイルがよくてセクシー。目に意志の強さが表れていて、ちょっと怖いくらいの雰囲気を漂わせつつ、ルディ―を手元に引き入れて行きます。いや〜カッコいい!

 そして今回のみどころは、やはりタンゴダンスでしょう。大空さんと、悠未さんをはじめとするマフィア軍団が、劇中でもフィナーレのショーでもたっぷりと堪能させてくれます。圧倒的な迫力で強い印象を残す音楽はそれもそのはず、世界で活躍するタンゴ・バンド「アストロリコ」の演奏だそうです。ヴァイオリンの弦を擦る音やバンドネオンの響きが胸に迫り、これを聴けただけでも贅沢な気分になれました。

 ルディーはさすが人気役者ということで、アラブ風やマタドールなど、宝塚のショーでよく見るようなコスチュームで楽しませてくれます。足の長い大空さんはどの衣装も文句なく似合っていて、これは眼福。ルディーが出演する演目の中に「血と砂」の名前が出て来るのも、ファンとしては密かに嬉しいのではないでしょうか。

 しかしルディ―自体は、その時々で結構流されているんですよね。渋い大人の男かと思っていたのですが、実際はどちらかというと、ちょっと頼りない母性本能くすぐり系の役柄かも…。主題歌も素朴な感じで、ポスターのイメージとはだいぶ違ったのですが、それがまた意外性があり楽しめました。小池先生のデビュー作品と思うとそこも興味深く、大空・野々コンビのますますの円熟ぶりが堪能できる公演です。

《筆者プロフィール》 さかせがわ猫丸 大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コムに「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

◆「ヴァレンチノ」

《梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演》2011年3月8日(火)〜2011年3月20日(日)
詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ
《日本青年館大ホール公演》2011年3月26日(土)〜2011年4月2日(土)
詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ

スター★ファイル

宝塚OGのインタビューなど掲載

 宝塚OGを中心とした舞台人へのロングインタビューを「スター★ファイル」コーナーに掲載しています。スター★ファイルの記事本文を読むにはAstand・ベーシックパック(月額525円)の購読が必要です。ベーシックパックの購読は、こちらから。

⇒スター★ファイル 記事一覧へ


検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介