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ステージレビュー

「今この瞬間の自分を」姿月あさとバースディ・ライブ

2011年3月10日

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写真:姿月あさとバースディ・ライブより=Billboard Live OSAKA拡大姿月あさとバースディ・ライブより=Billboard Live OSAKA

写真:姿月あさとバースディ・ライブより=Billboard Live OSAKA拡大姿月あさとバースディ・ライブより=Billboard Live OSAKA

 元宝塚宙組トップ、姿月あさとのバースディ・ライブ「THE PRAYER V」が3月7日〜8日、ビルボードライブ大阪で行われた。このバースディ・ライブは2003年に始まり、その時々の姿月あさとのエンタテインメントの集大成を表現し続けてきた。第5弾の今年は、ビルボードライブ大阪を皮切りに、名古屋(10、11日)東京(13、14日)で開催される。(文:堀内優美)

 今回のライブでは、オリジナル曲から新曲に加え、カバー曲を数々披露。変幻自在に活躍する彼女の魅力に生で触れることができる極上のひとときとなった。

 オープニングで披露されたのは「夢想遊泳」。黒のパンツルックにラメを施されたベストを着用、拍手に包まれ登場する。続いて「Sing Sing Sing」のイントロが流れると観客は手拍子を始め、ノリのいいナンバーで幕を開ける。

 「2010年はミュージカルが多かったんですけど、ライブはミュージカルやお芝居とは違った楽しみがあります。15歳で宝塚に入り、30歳で退団、そして今年、舞台生活23年目を迎え、41歳まで秒段階に入りました。自分で自分を好きになりたい、そんな思いから次の曲をお届けします」そういって披露されたのは「What a Wonderful World」と「ケ・セラ・セラ」。カバー曲でありながらも、自身の魅力をたっぷり織り込み、しっとりと聴かせてくれる。

 「Brazil」では、自らピアノの鍵盤に向かう。燃える情熱のブラジルを熱唱するや曲の途中で「ずんちゃんバンド」なるバンドの結成。姿月あさとのニックネームは「ずんこ」。本名に由来され、ファンの間で親しまれている愛称であるが、この「ずんちゃんバンド」はまさにファンとともに結成。姿月が観客席に向かって笛を投げ、受け取った観客がその笛を、「1、2、3、4」のリズムに合わせて笛を吹く、という設定だった。

 これがなかなか拍子を取るのが難しく、終始笑いに包まれながら進行していく。観客同士にもコミュニケーションが生まれ、緊張感がほぐれた楽しいムードに一変する。大ホールではなかなか味わえないこの親近感は、まさにビルボードというステージと観客席が近い空間ならではの演出。距離感を感じさせず、アーティストの人柄や素顔に生で触れることができる。

 変わって、真紅のドレスにチェンジしての再登場。エキゾチックで情熱的な艶っぽさに、思わずため息がこぼれる。昨年末のクリスマスディナーショーでは、秋元康による8曲の書き下ろし作品が「ディナーミュージカル」として披露された。今回はそのうちの1コマとして芝居を交えて3曲を披露。ストーリーは、舞台の幕が開くまでの大女優の話。本番を控えた大女優のメイク室に新人の役者が挨拶に入ってくる。大女優はその新人を見て、自分の初舞台や若いころを思い出しながら1人芝居が繰り広げられていく…。

 まずは、「青空の鳥、籠の鳥」。籠の中の鳥は大空を知らない、羽の広げ方がわからないという内容のフレーズは新人の頃には知らなかった舞台という世界への憧れと不安を表現している。

 続いては「約束の花束」。誕生日に昔の恋人からバラが届くという、切なくも大人の恋を連想させる曲。バースディ・ライブにちなんで選曲されるあたりが心ニクイ演出である。

 そして、ステージに賭ける女優の覚悟を強く表現された「Actress」。私は泣かない、自分のことでは、赤い血を流しても 痛みこらえるでしょう、という内容には、姿月自身の女優魂が込められているように感じとれる。「バラ」といい「赤い血」といい、真紅のドレスになぞらえ、情熱的で強さを持った生き様が体現されている。

 「スカボロー・フェア」では姿月に加え、バンドメンバー、遠山哲朗(ギター)、TOKIE(ベース)、大石真理恵(パーカッション)、この4人の個性が発揮。4人の気持ちが毎日全く違い、毎日その瞬間瞬間を楽しみたいというそれぞれの思いが伝わってくるようなセッションである。

 エンディングには、昨年末に秋元康により作詞・プロデュースされた話題の新曲「夜明け」。この曲について姿月は、「自分もそうなっていけばいいな、と思っている大切なオリジナルです。皆様の心にも届き、相互に届けあえることを信じて歌います」と語った。誰もが抱えている悩みが明けてゆく夜明けの描写を、等身大の自分としてリアルに歌い上げている。

 どんなに闇が深くても必ず夜が明ける、暁が待っている…そんな希望に満ちた歌詞は切なくも、多くの女性が共感するのではないか。これが30歳の女性が歌うのとはまた違い、まさに41歳を迎えようとしている1人の女性、姿月あさとが歌うからこそ、重みがあり、息を吹き返す曲であるように思う。

 アンコールではミュージカル「エリザベート」のトートを彷彿とさせる衣装をまとい「最後のダンス」を熱唱。ここでは宝塚時代の男役の貫録が発揮され、ファンはたまらず大拍手に大喝采。「(ソロシンガーとして)11年目を迎え、いろんな形で歌っている中、また次の羽を生やしていきたい。音楽は、男とか女とか関係なく、性別や国境を越え、みんなが共有できるもの。今の世紀に出会った人たちとのご縁を大切にしていきたい」。

 そしてアンコールの2曲めは「Que Sara」。バースディ・ライブならではの彼女の人生観が集約された曲でもある。「先のことなんてわからないけど、今この瞬間の自分を出したい」そんな人生観が込められたバースディ・ライブ、誕生日をスタート地点に彼女自身新たな出発を決意しているように感じた。「いろんな経験があって41歳を迎えようとしている。年を重ねていくうちに、たくさんの好奇心の中に、別れがあり、出会いもある。その中で這い上がってくるのは自分自身だと思う」。

 苦しみも悲しみも全てそぎ落とされて力が抜けた「大人の余裕」、そんな女性の魅力を等身大で体現した珠玉の時間だった。

《筆者プロフィール》堀内優美 フリーライター。73年生まれ。兵庫県・淡路島出身。行政の企画情報課で広報・番組制作に携わった後、フリーアナウンサーに。新聞・雑誌・WEBなどで記事の執筆、コラムの連載をしている。自身の経験を生かした音楽・舞台・映画といったエンタテインメント分野が得意。司会者や民間教育機関の講師としても活動している。

◆Shizuki Asato Birthday Live 2011「THE PRAYER V」

《名古屋公演》2011年3月10日(木)〜2011年3月11日(金)、名古屋ブルーノート
《東京公演》2011年3月13日(日)〜2011年3月14日(月)、スイートベイジル139
詳しくは、姿月あさと オフィシャルWEBサイトへ

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