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ステージレビュー

NY最先端のダンス、「エレクトリック・シティ」開幕

2011年4月21日

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写真:「エレクトリック・シティ」より=撮影:九重圭吾拡大「エレクトリック・シティ」より=撮影:九重圭吾

写真:「エレクトリック・シティ」囲み取材より=撮影・岩村美佳拡大「エレクトリック・シティ」囲み取材より=撮影・岩村美佳

写真:「エレクトリック・シティ」囲み取材より=撮影・岩村美佳拡大「エレクトリック・シティ」囲み取材より=撮影・岩村美佳

 NYを拠点に世界に活躍の場を広げる日本人パフォーマー、TAKAHIROと、NYのトップダンサーたち、そして、元・宝塚の湖月わたるも加わったダンス・パフォーマンス「エレクトリック・シティ」が、いよいよ幕を開けた(4月19・20日 東京国際フォーラムホールC/22日 名古屋市芸術創造センター/26・27日 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ)。(文・中本千晶)

 世界のトップダンサーたちが集うこの舞台。ひたすらに踊りまくるのかと思いきや、ユーモラスなストーリー仕立てで展開した。もちろん、一人ひとりの圧倒的な実力が束となってかかってくるような、ダイナミックなダンスも見どころ。ドラマのなかのダンス、ダンスのなかのドラマ、二重に楽しめる舞台である。

 事前の囲み取材で、TAKAHIROは「NYの街を切り取って、ここ有楽町に持って来ました」と語ったが、まさにその通りの、NYのストリートのノリが伝わってくるような空間が舞台上に出現。「ダンサーになりたい」という夢を心に抱いた日本人青年タカヒロが、道に迷ったり、地下鉄でゲーム機を盗られたり、さまざまな事件に巻き込まれつつ、夢をつかんでいくまでの物語が描かれる。

 青年タカヒロは、実際に単身でNYに渡って、現在は世界を代表するパフォーマーとして活躍するTAKAHIROの姿そのままだ。小柄で、お人好しで、首にカメラをひっさげて写真ばかり撮っている。でも、いざ踊らせてみるととんでもない力を発揮する。

 体の隅々までを繊細に使いこなす表現力と、どこでも通用する「国際的癒し系」な笑顔、それが世界で通用する秘訣なのではないかと感じてしまった。おなじみの持ちネタのひとつ、アニメ「Dr.スランプ」の主題歌に乗ったコミカルなダンスも劇中で登場する。

 日本人タカヒロを受け止めるNYのダンサーたちも、それぞれに個性的で人間的、そして温かい。劇中でタカヒロが憧れるダンスカンパニー「THE MOVEMENT」の、少々惚れっぽい振付師を演じるのがエンジェル。実際の「THE MOVEMENT」の主宰者だ。

 メンバーのひとり、アノインティッドは、ドラムやベースなどの音を口で奏でる「ヒューマンビートボックス」という珍しい分野の第一人者だ。流れる音楽の一部は彼自身が奏でる音であり、いったいどこまでが彼の口から出ている音なのかの区別がまるでつかないのにはびっくりしてしまった。

 注目の湖月わたるは一幕で、ウォール街にいかにもいそうな、さっそうとしたキャリアウーマンとして登場。黒縁メガネにパンツスーツ、携帯電話を片時も話さず、いつも仕事に追われている。その彼女が後半、タカヒロやNYのダンサーたちとの出会いによって、思いがけない方向に変貌していくのだが…それは実際の舞台を観てのお楽しみ。その姿も、今回「直談判」でTAKAHIROに共演を申し込み、自分の殻を破るべくNYに押しかけた湖月を彷彿とさせるものだった。

 それにしても、湖月わたるのスケールにはNYの街がよく似合うなあと思った。日本では宝塚の元・男役のイメージがやはり強いけれど、今回のステージでは、大胆かつしなやかに踊る「女性」として、カンパニーの1ピースに完全になりきって、しっくりはまっているのが新鮮だ。

 その湖月が一番うれしかったのは、「こういう状況のなかで、皆さんが気持ち良く来日してくださったこと」なのだそうだ。海外アーティストの招聘公演が軒並み中止になる今、「今回もきっとご家族の間で、いろいろな話し合いがあったのだと思う」と湖月。だが、稽古の最終日、メンバーの家族が皆で見に来てくれて、「日本を元気に!」という思いで、とても気持ちよく送り出してくれた。その夜は、うれしさのあまり「ホテルでひとり泣き」してしまったのだとか。

 「エレクトリック・シティ」…今となっては何とも意味深なタイトルとなってしまったが、これに関して、エンジェルは「2003年、NYが大停電を経験したとき、僕らにとって『電気』は『希望』だった。停電に限らず、何か良くないことが起こった時に、それを乗り越えるカギは人々の希望にあると思うんだ」と語る(公演プログラムより)。

 人はいつでも「希望」によるエネルギーで、心に明るい灯をともすことができるのかもしれない。ふと、そんなことも考えさせられてしまうような舞台だった。

◆「エレクトリック・シティ」

《東京公演》終了
《愛知公演》2011年4月22日(金) 名古屋市芸術創造センター
《大阪公演》2011年4月26日(火)〜4月27日(水) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
詳しくは、公式サイトへ

 <筆者プロフィール>中本千晶(なかもと・ちあき)フリージャーナリスト。宝塚関係の著作に「宝塚読本」(文春文庫)、「なぜ宝塚歌劇に客は押し寄せるのか」(小学館新書)。Astandスターファイルでも「ヅカナビ」連載中。


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