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ステージレビュー

水夏希、さっそうと刑事役「スミレ刑事の花咲く事件簿」

2011年5月9日

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写真:舞台「スミレ刑事の花咲く事件簿」より拡大舞台「スミレ刑事の花咲く事件簿」より

写真:舞台「スミレ刑事の花咲く事件簿」より拡大舞台「スミレ刑事の花咲く事件簿」より

 昨年9月に宝塚を卒業した元雪組トップスター水夏希の、退団後初の舞台となる「スミレ刑事の花咲く事件簿」が、いよいよ初日の幕を開けた(5月2〜7日 東京・新国立劇場中劇場/12〜15日 大阪・森ノ宮ピロティホール/17〜18日 名古屋・中京大学文化市民会館プルニエホール)。(文・中本千晶)

 この作品は、出版、舞台、映像の3つの手法を使い、水演じる「スミレ刑事」が主人公のミステリードラマをシリーズでみせていくところが大きな特徴だ。すでに書籍全4巻は昨年12月から順次発売が開始されている。全4話が収録されたDVD−BOXは、舞台初日と同時の2日に発売された。CSフジテレビ ONE TWO NEXTでも「episode 0」の放映がある。

 書籍の第1巻によると、スミレ刑事こと「伊原すみれ」は、休日は自宅でジャージを着てエクササイズをしながら「もし結婚しないで一生ひとりだったら…」などと悶々とするアラフォー独身女性。だが、ひとたび刑事として現場に急行する姿は男前でカッコ良く、若い女性警官の間でも憧れの的。

 舞台版の現場は、人気バンドのライブを翌日に控えたステージだ。メンバー間の不穏な空気に、とある未解決事件との関連を感じたすみれが、裏方のバイトになりすまして「潜入捜査」をしている。ステージには、なぜか思わせぶりな階段のセットがある。

 一幕目は「タカラヅカの男役スターそっくり」というすみれをネタに、ひたすらコミカルに進行。同じく「潜入捜査」にいそしむ管理官の伊集院(飯田基祐)らと、達者な芝居をみせる。一歩間違えると宝塚愛好者の反発すら買いそうなパロディも、サラリとこなして笑わせてしまうところはさすが。

 ダンサーの怪我であわやライブが中止というところで、すみれ達が臨時ダンサーとして飛び入り? そして、何故か踊れてしまうすみれ? というありえない展開も、「踊ってみせてくれるのなら」ということで許せる。このほかにも、舞台ならではの趣向が盛りだくさん。「4兄弟」の役を一人で演じる壌晴彦の早替わりも見ものだ。

 2幕はうって変わって、ミステリードラマならではのシリアスな展開。すみれが事件の鍵を握るとにらむ、バンドのスター朝比奈準(徳山秀典)と対峙する。そして、真犯人は思いがけないところに…。

 すみれを慕い、シリーズを通してコンビで登場する宝塚オタクの刑事に中山麻聖。また、タカラヅカ出身の麻尋えりかが、男役の気配を微塵も感じさせない女の子役を披露している。ラストには、歌って踊るミニライブもちゃんと付いている。

 お芝居の最後に語りかける言葉が、「罪は罪」をモットーとするスミレ刑事らしい。「仕方がない」とあきらめてはいけない。私たちは、自分たちがしたことへの責任はきちんと取り、それでもなお、笑って生きて行きたいもの。厳しくも潔い、このメッセージは今回の舞台を越えて、今の日本中の人に語りかけるものとして心に響いた。

 舞台、書籍、映像のメディアミックス。「男役スターにそっくり」というキャラを、実際に男役の最高峰を極めたタカラヅカ出身者が演じる。この2点において、従来にない新しい試みとなった「スミレ刑事」。昨今、タカラヅカOGがそれぞれの持ち味を生かした形で活躍をみせる舞台が多い。そんな中でも「なるほど、水夏希はそう来たか!」と唸らされる一作となった。

◆「スミレ刑事の花咲く事件簿」
《東京公演》終了
《大阪公演》2011年5月12日(木)〜15日(日)、森ノ宮ピロティホール
《名古屋公演》2011年5月17日(火)〜18日(水)、中京大学文化市民会館・プルニエホール
詳しくは、公式サイトへ

〈筆者プロフィール〉中本千晶(なかもと・ちあき)フリージャーナリスト。宝塚関係の著作に「宝塚読本」(文春文庫)、「なぜ宝塚歌劇に客は押し寄せるのか」(小学館新書)。Astandスターファイルでも「ヅカナビ」連載中。


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