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ステージレビュー

甘酸っぱく瑞々しい 宝塚「ハウ・トゥー・サクシード」

2011年7月5日

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写真:梅田芸術劇場公演「ハウ・トゥー・サクシード」より=(C)宝塚歌劇団拡大梅田芸術劇場公演「ハウ・トゥー・サクシード」より=(C)宝塚歌劇団

写真:梅田芸術劇場公演「ハウ・トゥー・サクシード」より=(C)宝塚歌劇団拡大梅田芸術劇場公演「ハウ・トゥー・サクシード」より=(C)宝塚歌劇団

 宝塚雪組のミュージカル「ハウ・トゥー・サクシード―努力しないで出世する方法―」が大阪の梅田芸術劇場で幕を開けた。音月のやわらかな笑顔が舞台全体を包み込み、雪組メンバーが快活に歌い踊る楽しい作品だ。(文・アサヒ・コム編集部 岩瀬春美)

 主人公の窓ふき青年フィンチを演じるのは、雪組トップの音月桂(おとづき・けい)。宝塚では1996年に花組が公演し、真矢みきがコメディーセンスを発揮して好評を博した。現在ブロードウェーでは、「ハリーポッター」のダニエル・ラドクリフが演じて話題となっている。

 フィンチは、オフィスビルでゴンドラに乗って、窓ふき仕事、ではなく本に夢中になっていた。本のタイトルは「努力しないで出世する方法」。出世を夢見るフィンチは、その本に書いてあるとおり、大会社のオフィスに向かった。そこで偶然、社長のビグリー(汝鳥伶/なとり・れい)にぶつかり、人事部長ブラット(未涼亜希/みすず・あき)の勘違いで郵便係として採用される。その様子を見ていた秘書のローズマリー(舞羽美海/まいはね・みみ)は、フィンチにひとめぼれをし、彼の力になりたいと考える。郵便室では、社長の甥、バド(早霧せいな/さぎり・せいな)が、コネを使って出世を狙っていた。

 ビグリー社長の秘書ミス・ジョーンズ(舞咲りん/まいさき・りん)にも気に入られ、うまく社長に近づけたフィンチは、企画推進部に就任し、専用のオフィスと秘書を与えられることに。秘書は、社長の愛人でセクシーなブロンド美女ヘディ(晴華みどり/はるか・みどり)。女好きの部長ギャッチ(沙央くらま/さおう・くらま)がヘディに手を出してしまい左遷、フィンチは部長に昇進。その後トラブルが発生し、ウォンパー会長(緒月遠麻/おづき・とおま)もからんで、事態は思わぬ方向へ…。

 こんなトントン拍子の出世は“ありえへん”とツッコミを入れたくなる。でも、音月演じるフィンチは、そんな思いを抱かせないくらい愛敬たっぷりで嫌味がない。その優しい笑顔で許されてしまう。

 ストーリーは、軽快な音楽とともにテンポよく運んでいく。歌って踊るシーンが多く、その中で音月は誰と組んでも自然になじんで見えた。一つ一つの場面を、音月の確かな歌唱力と安定感のあるダンスが下支えしている。

 舞羽は、シャボン玉のようなふわっと透明感のあるローズマリーを好演。音月フィンチと舞羽ローズマリーの息もぴったり。節目で「I Believe in You」を、音月がソロで明るくさわやかに、ときにしんみりと情感たっぷりに、舞羽が1人でけなげに、最後には2人でデュエットと、場面によって歌い分けられ、2人の笑顔とともに、いつまでも心地よく耳に残った。

 他のキャストもそれぞれに個性的だ。ビグリー社長演じる汝鳥は、どう見ても本当の社長にしか見えない。カラフルな衣装でちょこまかと動き回る掃除婦(飛鳥裕/あすか・ゆう、麻樹ゆめみ/あさき・ゆめみ)の存在は、社員ばかりの登場人物の中で客観性が出て、スパイスをきかせる。

 早霧は、「ドラえもん」ののび太とスネ夫をかけあわせたようなコミカルなキャラクターで盛り上げる。空回りばかりするバドを、声のトーンで、大げさな表情で、手足の動きに緩急をつけたり、体全体を使って飛んだり跳ねたりと、あの手この手で表現。

 未涼ブラットは、涼しげな目元で凛とした空気を漂わせる。スーツをしなやかに着こなし、一見、知性と理性にあふれるビジネスマンだが、社長の前では一転、典型的な哀しきイエスマン。フィンチ愛読の本の声も未涼が担当、明瞭な語り口調で導いていく。

 緒月は1幕で郵便室長のトィンブルとして、2幕でウォンパー会長として登場。トィンブルはお辞儀で体を曲げる角度がおおげさで、会長は正しい座り方のお手本のように背筋をピンと伸ばして台車に乗せられて登場し、長身を生かしたダイナミックな動きが笑いにも生かされ、独特の存在感を発揮。

 沙央演じるギャッチは、女好きのキャラクターを瞬発力で表現。フィナーレでは淑女たちを囲って、ラテンのナンバーを軽快に歌い踊る。その開放的な姿がプレイボーイらしかった。

 1幕のコーヒーブレイクのシーン。バドを中心として、ローズマリーの友人スミティ(愛加あゆ/まなか・あゆ)や、カラフルなスーツ姿やワンピース姿の会社員の男女が大勢で、コーヒー欲しい!とだだっ子のようにじたばたと踊る様子は見もの。

 2幕の終盤、ミス・ジョーンズを演じる舞咲の魂に響くような力強い歌声は圧巻。ゴスペル調の「Brotherhood of Man」を全員で歌うシーンは、連帯感を感じさせ、客席をぐっと引きつける。演じているキャスト自身がそれぞれの役を、このミュージカルを楽しんでいる様子が伝わってきた。

 2011年版の「ハウ・トゥー・サクシード」は、今が旬のサクランボのように甘酸っぱくて瑞々しい音月・舞羽コンビを中心としたカラフルでポップな作品になっていた。

【製作発表全文は、こちら】

◆ミュージカル「ハウ・トゥー・サクシード―努力しないで出世する方法―」

《大阪公演》2011年7月1日(金)〜7月17日(日) 梅田芸術劇場メインホール
詳しくは、公式サイトへ


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