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ステージレビュー

悲喜こもごもの冒険活劇 ミュージカル「三銃士」

2011年8月2日

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写真:ミュージカル「三銃士」より=写真提供:東宝演劇部拡大ミュージカル「三銃士」より=写真提供:東宝演劇部

写真:ミュージカル「三銃士」より=写真提供:東宝演劇部拡大ミュージカル「三銃士」より=写真提供:東宝演劇部

 「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」…帝国劇場100周年記念公演「三銃士」が7月17日より幕を開けた(8月26日まで。9月3日〜28日/博多座)。オランダ、ドイツで大ヒットしたミュージカルの日本上演。舞台ファンを唸らせる実力派キャストがそろい、笑いあり涙ありの見応えある一作となっている。(フリージャーナリスト・中本千晶)

 言わずと知れた、アレクサンドル・デュマの同名の長編小説が原作。銃士隊に憧れて田舎から出て来たダルタニャンが三銃士らと出会うところから、いわゆる「王妃の首飾り事件」が落着するまでが描かれる。

 ミュージカルとしてのメリハリをつけ、よりわかりやすくするために、一部原作にはない設定も付け加えられている。リシュリュー枢機卿の陰謀から王妃を救うべく活躍するダルタニャンと三銃士らの冒険活劇を縦糸に、3組の男女が織りなすせつない恋のドラマを横糸に据えて、物語が展開する形だ。

 主人公ダルタニャンを演じるのは井上芳雄。いつもは貴公子的な役どころが多いが、今回は純朴なイナカモノの青年をチャーミングに演じてみせる。とくに一幕はコミカルに笑わせるシーンも満載だ。

 このダルタニャンがパリに出て来て一目で恋に落ちるのが、王妃の侍女コンスタンス(和音美桜)。原作とは少し違う設定だが、この2人が見せる「純愛」の場面は、戦いの連続のなかで清純な彩りを放っている。

 ダルタニャンと友情を結ぶ三銃士の面々は、兄貴分だが少々気が短いアトス(橋本さとし)、豪快で食欲旺盛なポルトス(岸祐二)、いつ何時も優雅さを忘れないアラミス(石井一孝)。殺陣にも三人三様の個性が巧みに盛り込まれており、目がいくつあっても足りないくらい。今回、オーケストラボックスの前面にエプロンステージが設けられており、ここで繰り広げられる1対1の殺陣は迫力満点だ。

 対する、リシュリュー枢機卿一派がロシュフォール(吉野圭吾)とミレディ(瀬奈じゅん)。ロシュフォールは隻眼で登場、片目を奪われたいきさつや、リシュリューへの厚い忠誠心なども描き込まれ、原作より人間味溢れるキャラクターとなっている。冷徹だが少し抜けたところも魅力的で、吉野ファンは必見だ。

 ミレディも、原作ではこれ以上ないくらいの悪女だが、本作のミレディは、かつての恋人アトスをひたすらに想う心ゆえに、リシュリューの手玉に取られる哀しい女性だ。だが、三銃士を相手取り、大胆な衣装でさっそうとした殺陣も見せてくれる。

 互いを疑いなく信じ合うダルタニャンとコンスタンスの関係が「光」だとすれば、アトスとミレディの間に流れるのは、対照的な「闇」だ。そして、国家のために良き夫婦とならざるを得ない宿命を負ったルイ13世(今拓哉)とアンヌ王妃(シルビア・グラブ)。この3組の恋のドラマが物語の「横糸」だ。3人の女性による三重唱は、聴きどころのひとつ。

 そして、ラスボス(最後の強敵)的存在感を持ってダルタニャンらの前に立ちはだかるのが、リシュリュー枢機卿(山口祐一郎)。国王はもちろん、神をも恐れぬ傲慢さ。荘厳に歌い上げる賛美歌のなかに底知れぬ恐ろしさを、いっぽうで、枢機卿らしからぬロックンロール調の歌のなかに滑稽さも醸し出す。

 注目なのは、バッキンガム公の従者ジェームズと、旅回り一座の役者の2役を演じる坂元健児だ。2役とも出番は多くないが、強烈なインパクト。前髪パッツン頭のオカマ従者ジェームズは、登場するだけで目を引き、笑いを誘う。旅回り一座の座元はいわばストーリーテラー役で、名もなき民衆の代表としての顔も持っている。

 結末は、原作どおり、いや、原作以上の勧善懲悪的な大団円になっている。だが、そのいっぽうで女たちの恋の結末はあまりに哀しい。この作品をハッピーエンドととるか、バッドエンドととるかは、観る人それぞれの価値観、人生観に左右されそうだ。

《筆者プロフィール》中本千晶(なかもと・ちあき)フリージャーナリスト。宝塚関係の著作に「宝塚読本」(文春文庫)、「なぜ宝塚歌劇に客は押し寄せるのか」(小学館新書)。Astandスターファイルでも「ヅカナビ」連載中。

◆ミュージカル「三銃士」
《東京公演》2011年7月17日(日)〜8月26日(金) 帝国劇場
詳しくは、公式サイトへ
《福岡公演》2011年9月3日(土)〜9月28日(水) 博多座
詳しくは、公式サイトへ

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