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ステージレビュー

大竹しのぶと新人・矢野聖人が熱演、禁断の愛「身毒丸」

2011年9月8日

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写真:「身毒丸」より=撮影:渡部孝弘拡大「身毒丸」より=撮影:渡部孝弘

 新キャストでの舞台「身毒丸」が6日に東京公演を終え、10〜12日に大阪公演、17〜18日に名古屋公演が行われる。この作品は、寺山修司の説教節による見せ物オペラ。「母を売る店」で父が買った新しい母の撫子(なでしこ)と、その義理の息子となった身毒丸との禁断の愛を描いている。1978年に寺山が初演した作品を、1995年に武田真治、白石加代子主演で蜷川幸雄が初演出。続いて藤原竜也、白石主演でロンドン公演を成功させ、国内でも評価を得てきた。新キャストは身毒丸にオーディションで選ばれた新人の矢野聖人、撫子は大竹しのぶが演じている。(フリーライター・岩村美佳)

 白くけぶる舞台に大きく赤く光る「身毒丸」の文字。グラインダーの火花が上空から降り注ぎ、舞台奥からゆらゆらと人々が現れる。夢か現(うつつ)か、これは人間なのだろうかと不思議な空間が広がる。「身毒丸」の世界に引き込まれていく幕開きだ。幼いころに死んだ母の面影を求め街を彷徨う身毒丸。父は「母を売る店」で新しい母を買うことにする。父に無理矢理連れてこられた身毒丸が撫子と目があった瞬間、この人を選ぶであろうという大竹の存在感に圧倒された。空気がゆらめき、何かが始まる。客席にいて、それを見てしまったような気持ちになる。矢野は繊細さと不安定さを全身から発し続けている。特にその瞳が印象が残る。

 撫子が「母」として家に入り「家族」を作るが、形ばかりの「家族合わせ」が続けられた。母として受け入れられない身毒丸は、反抗的な態度をとり、撫子に心を開かない。ついに折檻してしまう撫子から身毒丸は逃げ出し、亡き母に会いたいと地下世界へ赴いた。ろうそく舟の幻想的な地獄の場面、赤、緑、青、オレンジ…色と光の美しさに吸い込まれる。抑えていた感情が堰を切って溢れる撫子の激しさや、身毒丸の痛々しさが苦しい。

 寺山の独特の陰影に、蜷川と出演者によって冷たさや熱さといった肌で感じる感覚が加わっているように感じた。ラストシーン、今までとは大きく違う衝撃の新演出だが、恐ろしくもどこか美しく見える。宮川彬良の音楽が、多くの才能が融合した作品世界に深く溶け合っていた。

◆「身毒丸(しんとくまる)」
《東京公演》終了
(公式サイト)
《大阪公演》2011年9月10日(土)〜12日(月) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
詳しくは、梅田芸術劇場公式ページへ
《名古屋公演》2011年9月17日(土)〜18日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
詳しくは、愛知県芸術劇場公式ページへ

《筆者プロフィール》岩村美佳 フリーフォトグラファー、フリーライター。舞台関係、ファッションなどを中心に撮影してきた経験をいかし、ライターとしても活動している。「目に浮かぶ言葉」を伝えていきたい。


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