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ステージレビュー

専科の2人が存分に実力発揮、宝塚「おかしな二人」開幕

2011年9月16日

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写真:宝塚バウホール公演「おかしな二人」より=撮影・岸隆子拡大宝塚バウホール公演「おかしな二人」より=撮影・岸隆子

 いつもとはちょっと違う注目のバウ・コメディ「おかしな二人」が、9月15日、バウホールで初日を迎えました。何が違うのかと言えば、主演をつとめるのが、専科の未沙のえる(みさ・のえる)さんと、轟悠(とどろき・ゆう)さん。芝居巧者のベテラン2人が全編通してがっつり組む、めったにないチャンスとなりました。作品は、ブロードウェイを代表する劇作家ニール・サイモンのコメディーで、男同士の奇妙な同居生活を描きます。(フリーライター・さかせがわ猫丸)

 轟さんは今でもバリバリに主演されますが、未沙さんはいつも脇役を演じていて、真ん中に立つことはありません。それでもひょうひょうとした独特の味があって、時に笑わせ、時にほろりとさせ、登場するだけで舞台がぐっと引き締まる、芝居には欠かせない重要な役者さんです。いつも「もっと未沙さんの演技を長く観てみたい」と思っていただけに、今回は待ち遠しいくらいでした。この2人を中心に、星組の若いメンバー6人が加わって、歌もダンスもない、本格的コメディーに挑みます。

 ニューヨークのとあるマンション。バツイチでずぼらなスポーツライター、オスカー(轟)の散らかり放題なリビングには、今日も仲間たちが集い、ポーカーに興じている。そこへ、仲間のフィリックス(未沙)が行方不明との知らせが入った。やがて、妻に別れを切り出され絶望した彼がやってくるが、気の毒に思った離婚経験者のオスカーは、自分の部屋で同居することを提案した。だがフィリックスはとんでもない潔癖症で几帳面! ついにオスカーの生活をも巻き込んでいき――。

 轟さんのルックスは、アメリカのやんちゃな少年風。実際はずぼらで妻に逃げられたオジさんなのですが、失礼ながら「可愛い!」と思わずにいられないほどの若々しいスタイルです。ポーカー仲間の碧海りま(あおみ・りま)さん、美稀千種(みき・ちぐさ)さん、天寿光希(てんじゅ・みつき)さん、如月蓮(きさらぎ・れん)さんの4人と混じっても違和感なし。でもさすがに演技の深さは見せつけてくれました。仕草やセリフ回しの一つひとつがより自然で、格好つけた二枚目ではないのに、より男らしく、芝居に緩急をつけながら観客を惹きつけていくのはさすがです。

 一方、未沙さんは、いかにも生真面目なサラリーマン。あまりにも几帳面すぎて、それが次々と笑いの種となって弾けていきます。各組が行う通常公演で、スパイスのように笑いをさらうあの絶妙な演技が長時間見られるのですから、なんて贅沢なのでしょう。ずぼらな轟さんが几帳面すぎる未沙さんにイライラする、2人の掛け合いに笑いの連鎖が止まりません。さらに、同じマンションに住む、夢妃杏瑠(ゆめき・あんる)さんと妃白ゆあ(ひしろ・ゆあ)さんのセクシーなピジョン姉妹がからんで、ますますハチャメチャに。

 でもこのお芝居、みんな心の根が優しいんですよね。ポーカー仲間もいい加減に見えて、絶えず2人のことを気にしているし、ピジョン姉妹もただセクシーなだけじゃなく、本当は寂しがり屋のか弱い女の子たち。何より、轟さん演じるオスカーが、未沙さん演じるフィリックスに文句ばかり言いながらも、本当は友達思いなのがしみじみと伝わってきて、見ていてあったか〜い気持ちになれるのがいいですね。

 ところで、カジュアルな服装だったオスカーが、ピジョン姉妹を招くためにスーツを着て、身支度を整えるシーンがあるのですが、セリフを言いながら、ネクタイを締めてジャケットを着て…さりげない動作なのに、「これぞ男役!」とうならせるくらい、カッコよかったです。こういう細かいところもぜひ、チェックしてみてください。

 芝居の後には、ショーがついています。本格的コメディーで、本編には歌もダンスも一切ありませんでしたが、ここでは轟さんを中心に、しっかりと華やかな宝塚を味わえます。未沙さんも異色なモノをマイクにして「マイ・ウェイ」を熱唱。最後の演出も粋ですので、こちらもどうぞお楽しみに。専科バウ公演。その名の通り「これがベテランの実力だ!」と見せつけてくれる舞台でした。

◆「おかしな二人」
《バウホール公演》2011年9月15日(木)〜9月26日(月))
詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ

《筆者プロフィール》さかせがわ猫丸 大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コムに「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。


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