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ステージレビュー

スーツ男のカッコ良さ満載、「クラシコ・イタリアーノ」

2011年10月11日

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写真:宝塚大劇場公演「クラシコ・イタリアーノ」より=撮影・岸隆子拡大宝塚大劇場公演「クラシコ・イタリアーノ」より=撮影・岸隆子

 宝塚宙組公演「クラシコ・イタリアーノ―最高の男の仕立て方―」が、10月7日、宝塚大劇場で初日を迎えました。イタリアのテーラーが舞台とあって、‘スーツを着こなしてナンボ’の男役には真骨頂を見せる絶好のチャンス。その期待通り、トップスター大空祐飛(おおぞら・ゆうひ)さんの円熟した魅力があますところなく発揮された公演となりました。(フリーライター・さかせがわ猫丸)

 1960年代、イタリア。サルバトーレ(大空)が興したテーラー「グランチェロ」は、着る男を魅力的に見せると大人気だ。低価格の既製品スーツを前面に、さらなるアメリカ進出を狙う彼のドキュメンタリー番組を制作しようと、若手映像作家レニー(凰稀かなめ/おうき・かなめ)らテレビ局スタッフもやってきた。アメリカでのバイヤーとなるヘンリー社長(悠未ひろ/ゆうみ・ひろ)の期待も大きい。だが、仕立て職人のマリオ(北翔海莉/ほくしょう・かいり)は真っ向から反発、ナポリ仕立てのスーツを世界に認めさせたいサルバトーレと、伝統を守りたいマリオは次第に対立を深めて行った。

 全身黒のスーツに身を固め、金髪美女に囲まれ登場する大空さんはまさにカリスマ。看板となる衣装はどれも絶品で、コーヒー色のスーツに水色のシャツ&ネクタイという一般人ではありえない難しい組み合わせも、大空さんが着ると実にオシャレ。締めは定番の濃紺ピンストライプスリーピースを一分の隙もなく着こなし、年月を重ねた男役の醍醐味を見せてもらいました。

 「グランチェロ」の作品を発表するファッションショーでも、スタイリッシュなイタリアンスーツに身を包んだ男役が次々登場しますが、長身揃いの宙組スターさんたちには映えるのなんの。特に悠未さん、十輝いりす(とき・いりす)さんらがバシッとポーズを決めると、その完璧な着こなしと抜群のスタイルに「実際の男性を軽く超えたな」と思わず感嘆…。

 凰稀さん演じるレニーはアメリカの快活な青年。サルバトーレに会うたび惹かれていき、叱責されてもめげずに、ひたすら前向きに彼の姿を追い続けます。

 北翔さん演じるマリオは頑固な職人で、ミシンの導入を提案するサルバトーレに対し、あくまでも手作業にこだわる主張を曲げません。華麗にイタリアンスーツを着こなすシーンはありませんが、「エリザベート」におけるルドルフ皇太子のごとく、ピンポイントでインパクトを強く残す重要な役どころです。

 テレビ局プロデューサー、フランクの春風弥里(はるかぜ・みさと)さん演じる、いかにも‘マスコミの人’っぽい軽さや、レニーのガールフレンド、リズの愛花ちさき(あいはな・ちさき)さんが醸し出す優しい演技も光っていました。

 ドキュメンタリー番組のナレーターがキャンセルとなり、代役としてやってきたのが映画学校の研修生ミーナ(野々すみ花/のの・すみか)。NGを連発し、周囲に非難され落ち込む彼女を、サルバトーレだけが励ました。ミーナを送り届けた村で、彼女が本来の姿である仮面道化師として踊るのを見て、サルバトーレはナポリでの修業時代を思い出す。そんな中、‘グランチェロ’のアメリカ進出が暗礁に乗り上げ――。

 野々さん演じるミーナはさえない田舎娘ですが、達者な野々さんには素朴な少女役もお手のもの。サルバトーレに勇気づけられ、生き生きと自分らしく成長していきます。厳しいサルバトーレが、ミーナにだけはふとした優しさを見せるのがなんとも憎らしい。

 野望に燃え、成功するためには犠牲も厭わない。だが、絶えず満たされぬ思いを抱えるサルバトーレ。「おやっさん」と呼ぶ師匠との絆、職人たちの思い、伝統を守ることの意味。物語は華やかな仕事ぶりから、後半は彼の人生の原点へと帰るよう静かに進んでいきます。今回のお芝居に恋愛模様はほとんどなく、全編を通して、大空さん演じる男役の魅力を徹底的に描いているようでした。

 続いて「NICE GUY!! ―その男、Yによる法則―」。ドラマチックな演出が得意な藤井大介さんのショーは、いつでも確実に時を忘れさせてくれます。今回もオープニングから期待を裏切らず。野々さんの豪華なウエディングドレスと娘役の優雅なダンスで幕が上がると、一転、ナイスガイたちの熱いダンスで劇場の温度も急上昇。男役たちが踊りながら背中でチラリと見せるジャケットのド派手な裏地に思わず釘づけになりつつ、軽快なダンスにテンションも一気に上がりました。

 イケメンオークションでは、高級クラブの支配人役、北翔さんのバラエティーに富んだ紹介で各国の‘勢いある’イケメンが次々登場します。特に日本代表の風莉じん(かざり・じん)さんは「反則?」と思うほどの面白さ、参りました! 大盛り上がりの中、舞台の空気がガラリと変わって、今度はミステリアスな赤の世界へ。さまよう凰稀さんが大空さんに操られる幻想的で妖艶なダンスはとにかく美しく、大空さんの着物を斜めにはおった衣装も素敵です。ジャズのシーンでは凪七瑠海(なぎな・るうみ)さんと珠洲春希(すず・はるき)さんの女役や、北翔さんのどこまでも伸びて行く美声が堪能でき、悠未さんら若手9人が客席でお客様を次々と悩殺していくなど、見どころ満載。テーマソングの「♪ナイスガイ、ナイスガイ♪」のメロディーもノリやすく、最後まで舞台から目が離せません。芝居に続いて大空さんの魅力全開、全員がナイスガイ・ナイスレディーとなって弾けるにふさわしいショーで、元気をいっぱいもらえた作品でした。

◆「クラシコ・イタリアーノ―最高の男の仕立て方―」
《宝塚大劇場公演》2011年10月7日(金)〜11月7日(月)
詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ
《東京宝塚劇場公演》2011年11月25日(金)〜12月25日(金)
詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ

《筆者プロフィール》さかせがわ猫丸 大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コムに「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。


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