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ステージレビュー

「ロミジュリ」、包みこむ力の城田と放っておけない山崎

2011年10月14日

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写真:ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」より=撮影:宮川舞子拡大ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」より=撮影:宮川舞子

写真:ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」より=撮影:宮川舞子拡大ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」より=撮影:宮川舞子

 フランス発の注目のミュージカル「ロミオ&ジュリエット」が、上演されている。シェークスピアの戯曲を、フランスで映画音楽や、ポップスの作詞、作曲を手がけるジェラール・プレスギュルヴィック氏がミュージカル化し、2001年にパリで初演。世界で500万人以上を動員した。日本では10年に宝塚歌劇団が上演。今回、宝塚版と同じ小池修一郎氏の潤色・演出で新たな日本バーションとして話題を呼んでいる。怒りや憎しみで混沌とした世の中で、精一杯ひたむきに愛しぬくキャストたちの力強いメッセージを感じた。(アサヒ・コム編集部 岩瀬春美)

 原作は、シェークスピアの悲劇。原作の舞台ヴェローナはイタリアの北部の都市だが、壇上のヴェローナは、ルネサンス期を彷彿とさせるものではなく、時代が交錯するような不思議な街。モンタギューとキャピュレット、名門の両家の確執をめぐり、敵同士の親を持つ子、ロミオとジュリエットの悲恋を下敷きに、携帯やフェイスブックを登場させるなど現代風にアレンジされているのが今回の作品の特徴だ。

 主要な配役がダブルキャストとなっている。ロミオは、俳優の城田優と山崎育三郎。城田は、たたずまいそのものがロミオ。友人たちの間にいても、長身もあいまって一目置かれるような存在感がある。それでいて愛することに繊細で、情熱的。ジュリエットを愛のバリアで360度包みこむような包容力と、存在そのもので周りをぐいっと引っ張っていくような強さをあわせ持つ。何があろうとジュリエットを愛し抜く、気迫が伝わってきた。一方の山崎は、情感あふれる歌声と表現力で感情むきだしの等身大のロミオを熱演。ジュリエットには甘く優しく、落ち込む背中につい「大丈夫?」と声をかけたくなるような、放っておけない面もあり、山崎ロミオの一喜一憂に引き込まれた。

 ジュリエットには、オーディションで選ばれた新人の昆夏美とフランク莉奈。昆は、澄んだ歌声が劇場内によく響き、ロミオをまっすぐに愛する強さが伝わってきた。フランクは、舞台映えのする華やかな長身で目を引く。守ってあげたいと思わせる純粋さが漂っていた。2人とも初々しい輝きを放っていた。

 ロミオの友人、ベンヴォーリオ役の浦井健治は、安定感のある演技で支える。親世代の憎しみやしがらみ、敵対する若者たちの危うさ、ロミオとジュリエットの恋の顛末を、感情におぼれることなく見てきたベンヴォーリオ。じつは観客の目線に一番近い存在ではないかと思った。

 ロミオと友人たちが勢いよく歌う「世界の王」が流れると、劇場からは自然と手拍子が沸き起こる。アップテンポなリズムで、一度聞くと耳から離れない、広く人々に好まれるナンバーだ。

 どの楽曲も情景をよく表しており、引き込まれた。キャピュレット夫人(涼風真世)とモンタギュー夫人(大鳥れい)の競演は、両家の顛末を歌で表現。幕開けの「憎しみ」では両家の争いを呼び起こすように挑発的に、終盤の「罪びと〜エメ」では、氷が解けるようにもの悲しくも優しく歌いあげた。乳母(未来優希)が歌う「あの子はあなたを愛している」、キャピュレット卿(石川禅)による「娘よ」では、ジュリエットを思う気持ちをそれぞれが熱唱。ジュリエットの幼い頃の情景が思い浮かんだ。

 モンタギューとキャピュレットの若者が争う場面のダンスは現代的で斬新。ゼブラ柄の衣裳で統一されたモンタギューと、豹柄に身を包んだキャピュレットの若者たちが、群舞で互角に闘う。ビートのきいたロック調の音楽に乗って、宙返りなどアクロバティックなダンスで魅了。

 「死のダンサー」の存在も重要な役どころ。バレエダンサーの中島周が演じると、体重を感じさせないしなやかな動きでアメーバのようにロミオに浸透し、ダンサーの大貫勇輔は、蜘蛛のように忍び寄り、ロミオを絡める。世界を外から見つめる存在で、作品に厚みを与えた。

 今回の舞台には、宝塚バージョンにあった「愛のダンサー」は登場しない。愛と死とロミオとジュリエットというピラミッドのようなカッチリとした形ではなく、むしろジュリエットをめぐるキャピュレット家の複雑な人間関係がドーナツ状にとり囲む中で、2人の意志の強さを表す無限の愛が、ドーナツの中心部を円形に貫いているように思えた。

 キャピュレット卿(石川禅)との間に愛を見いだせないキャピュレット夫人(涼風真世)は、甥のティボルト(上原理生/平方元基のダブルキャスト)と関係を持ってしまう。ティボルトがジュリエットを愛していることを知ると、娘ジュリエットに対して女として嫉妬心を抱くなど、激しい憎しみの感情がうずまいている。そんなキャピュレット家の複雑な事情は、モンタギュー家との確執に加え、人間の業の深さを増幅する。そして、それが強調されればされるほど、ロミオとジュリエットのまっすぐでひたむきな愛が際立っていく。

 カーテンコールでは、「世界の王」を全員で大合唱。キャスト全員で楽しく歌い踊る姿に思わず胸が熱くなった。不朽の名作がベースにあるからこそ、舞台上のヴェローナは、鮮烈でリアル。争いが絶えない世界で、まっすぐに愛し合う強さを再認識させられた、鮮やかに心に残る一作だ。

◆ミュージカル「ロミオ&ジュリエット―究極の恋の物語―」
《東京公演》終了
《大阪公演》2011年10月8日(土)〜10月20日(木) 梅田芸術劇場メインホール
詳しくは、公式サイトへ


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