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ステージレビュー

異なる声質の融合が新鮮「ブルース・イン・ザ・ナイト」

2011年10月25日

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写真:「ブルース・イン・ザ・ナイト」大阪公演より=撮影・橋本正人拡大「ブルース・イン・ザ・ナイト」大阪公演より=撮影・橋本正人

写真:「ブルース・イン・ザ・ナイト」大阪公演より=撮影・橋本正人拡大「ブルース・イン・ザ・ナイト」大阪公演より=撮影・橋本正人

 1930年代のシカゴを舞台に、ブルースの名曲を歌い継ぐミュージカル「ブルース・イン・ザ・ナイト」。82年にブロードウェーで初演され、トニー賞ベストミュージカルにノミネートされた作品だ。日本では2003年に翻訳版初演。8年ぶりの再演となる今回は、オペラやミュージカルで活躍する森公美子、元宝塚トップスターの湖月わたる、AKB48の片山陽加と佐藤亜美菜(ダブルキャスト)、演歌歌手のジェロという変化に富んだ顔ぶれのハーモニーによる真新しい舞台となった。(アサヒ・コム編集部 岩瀬春美)

 このミュージカルは、4人が歌うブルースそのものがストーリーになっているという設定だ。舞台上には、薄暗い照明の下、3つに区切られた部屋と生演奏のバンド。ピアノ伴奏が流れると、ジェロ演じる「サロンの男・マン」が登場。「ようこそシカゴの夜へ」と日本語と英語を混ぜたトークで、1930年代のシカゴの夜へいざなう。

 安宿の3つの部屋に、3人の女性がそれぞれの事情を抱えてやってきた。森演じる「旅のレディ」が真ん中の部屋に、両側の部屋には、「上流の女・ウーマン」(湖月)と「若い女・ガール」(片山と佐藤のダブルキャスト)。登場人物には名前がない。4人の登場人物が、直接言葉を交わすことはほとんどなく、それぞれの苦い恋やうまくいかない人生をベッシー・スミスやデューク・エリントンらのブルースやジャズの名曲にのせて歌い継いでいく。

 森演じるレディは、かつてブルースシンガーとして栄光を極めた女性。人間味あふれる魅力が森本人と重なる。「Kitchen Man」ではステーキの乗った皿を片手に躍動的なパフォーマンスで見せ、「Wasted Life Blues」ではつまずきばかりの人生の葛藤を深く力強く歌い上げる。森の朗々とした歌声を聴いていると、歌の世界が映像で浮かんできた。

 湖月が演じるウーマンは、スタイリッシュで華やか。「あたしを呼んだSAVOY/Stompin’ At The Savoy」では華々しい時代の思い出を柔らかみのある声で甘美に、「あたしのミスター・パーフェクト!/Rough And Ready Man」では理想の人を追い求めすぎてちょっとイタい女性の気持ちを、客席を巻き込んで楽しく歌った。

 ダブルキャストのガールは、大都会で新しいスタートを切ろうとしている若い娘。筆者が観劇したのは片山陽加の回。明るく健康的な見た目のイメージとは裏腹に、過去をふっきれていない悲哀が漂う。年の割にずいぶん色々な経験をしてきたような、大人臭ささえ感じさせる声で、ギャップが面白い。佐藤亜美菜出演の回を観たスタッフによると、佐藤はざらつき感のある歌声がユニークで、森や湖月に負けない存在感を示していたという。

 ミュージカル初挑戦となるジェロは、3人が泊まっている安ホテルのバーのシンガー役。時折こぶしをきかせながら、心地よい歌声を響かせる。恋に飢える男心を「Baby Doll」で、ちょっぴり切なさを漂わせながら表現。

 とりわけ3人の女性の連帯感のあるコーラスは、目を洗うような新鮮さがある。「まだまだこれから/Take It Right Back」では、森の力強い歌声に共鳴するかのように、湖月と片山が呼応し、世代の異なる3人が女のたくましさをパワフルに披露。「When A Woman Loves A Man/Am I Blue?」では、ジェロの包み込むような低音の響きと3人の歌声が溶け合って、多層的な魅力が増す。まったく違う声質の4人によるハーモニーは、往年の名曲でもまったく新しいものに聞こえるかもしれない。

 融合は声だけじゃない。30年代のシカゴの話とはいえ、ここは日本。そして地方公演もある。筆者が観劇したのは大阪の新歌舞伎座での公演だが、「昨日、クレイン・ブリッジつまり鶴橋で焼き肉を食べたのよ」などと森の郷土色豊かな「ご当地トーク」が飛び出し聴衆を沸かせた。

 世代も声質もまったく異なる3人の女性の声がバランスよく融け合い、さらにジェロのサポートで新しいハーモニーが生み出されている新鮮な舞台だった。

◆ブロードウェイ・ミュージカル「ブルース・イン・ザ・ナイト」
《名古屋公演》2011年10月30日(日) 御園座
東京、札幌、函館、大阪公演は終了しています。
詳しくは、公式サイトへ


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